7-59 けんもほろろ
言えない。『どう考えても勝てないから、早稲の生き残りに頼る』なんて。
言えない。『獣谷の、どこに里が在るのか分からないから、良村を頼る』なんて。
「人の事は人で、隠の事は隠で。」
思い付きじゃ無いヨ。という顔をして、ドン。
「仰る通り。その上で、お伺いします。」
逃がさないよ。という顔をして、オミ。
「隠の世では無く、大実社に。という事は、深い御考えが。えぇ。きっと、御有りなのでしょう。」
逃げ道を塞いで、詰め寄るヘグ。
「・・・・・・くっ、詳しくは。」
ドングリ団子、美味しいなぁ。テヘッ。
「そうですか。木の声で。」
洗い浚い聞き出し、オミ。
「あわよくば、と。」
根掘り葉掘り聞きだし、ヘグ。
「ヒャイ。」
仔猫くらいに小さくなる、ドン。
オミは大実神の使わしめ。ヘグは元、大実神の使わしめ。とっても長い付き合い。なので息、ピッタリ。
次から次へ問われ、しどろもどろ。ドンに残された道は、全てを明かす。それだけ。
「ドンさま。嵓には?」
「あんなオッソロシイ里、嫌です!」
ヘグに問われ、ドン。真っ青。
「確かにオッソロシイですが、忍びが居ますヨ。」
え、何で? という顔をして、オミ。
「ししっ、忍びは。よよ良村に、もっ。」
分かりやすく怯えながら、ドン。
「良村に忍びは、居ません。一人も。」
涼しい顔で、オミ。
「戦い慣れているだけ、ですヨ。」
ニコニコしながら、ヘグ。
「・・・・・・ソウデスカ。」
ドン。もう、いっぱいイッパイ。
「良村の長、シゲだ。札が真だと判った。縄を解く。」
「良村の樵、カズだ。夕餉には早いが、食べてくれ。」
縄が解かれ、温かい飲み物と、団子を貰った。ホッとしたらグゥと鳴り、大慌て。
双から良山まで、舟を漕いで来た。一人で!
そりゃ、お腹も空きますよ。モグモグ、ゴックン。ゴクゴクッ、ハァ。美味しい。し・あ・わ・せ。
話し合いが、始まった。
「ドンさまから伺った。双の里は、結びたいそうだな。獣谷の隠れ里と。」
シゲが問う。
「はい。その通りです。」
ツヨが答える。
「諦めてくれ。」
「・・・・・・え?」
断られ、ポカン。
「長が決めた事だ。覆らない。諦めて、双に帰ってくれ。朝餉を食べたら、直ぐに。」
カズに言われ、ガッカリ。
これから帰ると危ないから、泊めてあげる。でも、帰ってネ。という意味である。取り付く島も無い。
話し合いが、終わった。