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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
412/1589

7-55 止せば良いのに


耶万やまの闇が、他に漏れる事は無い。遅かったが、間に合った。広がったが、とどまっている。大貝山の統べる地に。


しかし、止まるのは闇だけ。人は動く。


耶万は大国おおくに、戦好き。川を上がった先に、豊かで広い地が。そう、知られたのだ。来る。仕掛けて来る、攻めて来る。



南から、北へ伸びる川は多い。霧雲山の統べる地には、三つ。曲川まがりがわ、暴れ川、鳥の川。


曲川は、良村よいむら。暴れ川は、獣谷の隠れ里。鳥の川は、山裾の地が守るだろう。


良村も獣谷も、戦い慣れている。早稲わさの生き残りは、とても強い。いくさに備え、罠を仕掛けている。




「では!」


「良く考えよ、おさ。どちらもふたなりより、北にある。」


「そっ、う、でした。」



楢守ならもりの祝に頼み、南の動きを探ってもらう。木の声を聞き、届けられる。しかし、いつ来るのか。どう仕掛けて来るのか。


どのような戦の具を、どれくらい持って来るのか。どのような毒を使い、どのように戦うのか。何も分かず、何も掴めず、どう戦う。どう守る。



「結ばねば。獣谷の、隠れ里と。」


「しかし祝。獣谷が他の里と結ぶとは、思えません。」


「双とは、結ぶ。・・・・・・かも。」


ニコッ。



当たって砕けろ。分からなくとも思い切って、るだけ遣れ。


砕けてしまっては、元の子も無い。しかし、そこまで決めて行えば、成し遂げられる。かも。



「かもカモかもカモ、やかましい! 思い立ったら、ぐ動く。サッサと獣谷へ、使いを出せ。」


「はっ、ハイ。」


里長、すたこらサッサ。で、戻った。


「どうした。」


「獣谷の、どこに里が?」


・・・・・・!



獣谷は広い。名の通り、獣が多い谷なのだ。里を探してウロチョロすれば、パクッと美味しく食われてしまう。


木の声が聞こえる祝が行けば、辿り着けるだろう。しかし、行かせられない。長と祝は、頭を抱える。



「良村を頼るより他、ありません。」


「そう、だな。そうしよう。」






双の狩頭が、良村へ行く事になった。山を下り、舟で暴れ川を上る。白縫川へ入り、雪雲川へ。



「ワン、ワンワン。ワワン、ワン。」 トマレ、ドコカラキタ。シラナイフネ、ハイルナ。


狩り人? にしては、とってもオカシイぞ。犬を連れて無い。狩り? 一人で山に? 危ないぞ。何かあったら、どうする。


「ヒィィ。犬、恐いぃ。」


幼子おさなごの時、犬に尻を噛まれた。小さいからと棒で突き、怒らせたのだ。その子が育ち、狩り人に。いろいろ乗り越え、狩頭になった。父の後を継いで。


「あっち行け。シッシ。」


せば良いのに、かいで突っ突ついた。ヒラリとかわし、タッと舟へ。


「ヴゥゥ。」 ナニスンダ。


コイツ、嫌い。あぁ~あ、捨てちゃった。どうやって帰るんだ? 櫂が無きゃ、漕げないぞ。



「・・・・・・どこの、誰だ。」


飼い主シゲ、参上。


「ヒィィ。お助けぇぇ。」


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