7-49 救出成功
何だ、この闇は。生きているようだ。
「これはこれは、大貝神。」
「そなた、祝か? 耶万の。」
「フフッ。」
ブワッと闇の手が伸び、大貝神を掴む。そのまま引き寄せられ、ガバッと抱きつかれた。
「なっ、何を。」
ズルズルと、土の中へ。
大貝神の使わしめ、土。八つの脚でタンッと飛び上がり、二つの脚で突き刺さる。と同じくして、ザザザッ。
土は地蜘蛛。掘り進めるのは、お手の物。暮らしやすく、慣れた姿に止めているだけ。何を隠そう、大蜘蛛の妖怪である。
早い、蚯蚓よりも。早い、土竜よりも。八つの目を光らせ、神を攫った『不届き闇』を追う。
逃がすモンか!
「緩りと、お寛ぎください。」
ニヤリ。
「く、つろげるかぁぁ!」
大貝神、絶叫。
ボロッ、ボロボロ。・・・・・・ポンッ。シュタッ。
「こっの、不届き闇ぃぃぃ!」
使わしめ土、絶叫。
「なっ、え?」
固まる、闇の主。
シュシュッ。
「暫し。」
神を閉じ込め、尻をブンと振る。
「アレェェェェェ。」
蜘蛛の糸は強い。地蜘蛛の巣穴は、管のよう。つまり、開けた袋を被せてキュッと閉じ、引き寄せたのだ。
「アナタ。とっても美しい姿、してたのね。さぁ、こちらへ。いらっしゃいな。」
ニッタァ。
「私は、大貝神の使わしめ。闇堕ちした妖怪になど、付かぬ!」
「そう。なら、死んで。」
水を含んだ灰のように、ドロッとした闇が襲う。
ズサズサ、ズサァァァ。
全速力で逃げる。八つの脚が見えない程、早く動いている。不敬なのだが、尻の先には・・・・・・。
シュポォォン。
飛び出した! 神の御坐す袋を、ポンッと背に乗せ、タッと駆け出す。とっても早い、巨大蜘蛛。忍びより早い。
「待てぇぇぇ。ゴッ。」
祝らしからぬ声が出た。蜘蛛の糸で出来た壁に、打ち当たったのだ。
ドサッ。
「えっ。」
フワッなど、生温い手立てを講ずるとでも?
「出せぇぇぇ!出しやがれぇぇぇ!」
出すワケが無い。そのまま大貝社まで、突っ走る。
闇を捕らえたソレには、清らな力が宿っている。力が無ければ見えない、蜘蛛の糸。しかも袋。暴れればキュッと閉じる、スグレモノ。