7-45 さぁ飲んで、飲んで
「突き刺し、吸わせた。で、次は。」
大王が、遅れてきた臣に問う。
「そっ、の。申し上げます。」
平伏し、答える。
ホゥ、そうか。大貝社に、血を吸ったこの剣を捧げ、祈りを捧げる。それから、奪うのか。
良い、良いぞ。良い事を聞いた。しかし気になる。その巫、覡。これまでと、違っていた?
巫も覡も、神と人を繋ぐ者。鎮の西国や真中の七国では、神が乗り移る。とか何とか、言っていたな。
確か少ないが、中には。
「その巫、覡を添わせろ。子を、多く作らせろ。急げ!」
「ハッ。」
プッ。愚か浅はか、拙い醜い。アァァァ。プッ、クフフッ。堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ。闇が深まる、闇が輝く、闇が囁いている。
奪え、奪え、奪え。プッ、ククク。ククククク。
さぁ、踊りましょう。歌いましょう。
闇が溢れた。繋がるまで、もう少し。思い出すのよ、なぜ死んだのか。思い出すのよ、なぜ殺されたのか。思い出すのよ、なぜ奪われたのか。
「耶万神。いや、この感じ。祝?」
隠の守が呟き、屈む。土に軽く触れ、目を閉じた。
何だろう。この深く、冷たい闇は。生け贄にされたか、人柱にされたか。願いが届かず、そのまま。
いや、違う。冷たすぎる。もしそうなら、もっと熱い。
冷たい、それが全て。違い無い。戻ろう、祝辺へ。その前に、山守神の御耳に。
「あらぁ? アラアラアラァ?」
・・・・・・。
「みぃつけたっ。」
・・・・・・。
「フッ。何、その顔。」
氷のように、冷たい目。蛇に睨まれた蛙のように、動けない。逃げろ、動け、急げ!
「えっ?」
逃げた。逃げられた。どこ、どうやった。
「ヲォォォォォォォ!」
闇がグネグネ、暴れ出す。スサシュルッと這いながら。
「捕らえろ、逃がすな。」
闇が細かく震え、蜈蚣のような姿に。
気持ちが悪い。モヤモヤしているのに、デップリ太って。曲がりくねって動くのに、ガサガサと。
頭には大きな口。鮫の歯のように、重なって生えている。あれは、何だ?
根の国の生き物?
見た事が無い。隠の世では無い。中つ国の生き物でも無い。なら、どこから。・・・・・・いや、いくら何でも。しかし、他には考えられない。
今は逃げる事だけ、考えよう。それからだ。
「らぁあ、かぁあ、らぁあ。」
「はい。」
「らんろかぁ、しらさいよぉ。」
山守神は、酒癖が悪い。とっても悪い。大貝神、ゲッソリ。いつもなら、こうなる前に止める。使わしめが。そう、いつもなら。
控えているのは、隠の守。止める気など無い。ニコニコと、お酌をする。
椀子蕎麦のように!