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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
401/1581

7-44 最後まで聞こうよ


「ヴヴヴヴ、ヴァァア。」


バタッ。ピクッ、ピクピク。・・・・・・ガバッ。


「神はおおせです。『時は来た。つわものを集め、大貝山へ』と。」


目をギラギラさせながら、めかんなぎ。過ぎるほど大きく、表した。



耶万社やまのやしろには、祝も禰宜ねぎも居ない。だから代わりに、巫やおかんなぎが詰めている。


巫にも覡にも、祝の力は無い。だから見えない、聞こえない。



社の司には、見える。見えない物は見えるが、祝の力は無い。社の司が死んだ時、継ぐ子の誰かに、力が移る。その子が次の、社の司に。



今の耶万やまで見えるのは、社の司タク。見えそうなのは、継ぐ子アコ。アコは良那らなに助けられ、耶万を離れている。


つまり今、見えるのはタク、一人だけ。



タクがアコを出したのは、恐れたから。アコに力が有ると知られれば、大王おおきみに捨てられる。そうなれば、どうなる。大王は気が多く、せっかち。




「次、覡。」


「はい。」


静静しずしずと前へ出て、平伏す。そして・・・・・・。


「ヲヲヲ、ヲォォォ。」


バタッ。ピクッ、ピクピク。・・・・・・ガバッ。


「神は仰せです。『社に血を吸ったつるぎを捧げ、祈れ。そして奪え』と。」


そう言い残し、覡がドタッと倒れた。




大貝社おおかいのやしろ、か。


いつだったか、聞こえた。ここ耶万は、大貝山の統べる地だと。使わしめは蜘蛛で、闇を纏っていると。


そうか、闇か。


耶万神は、禍津日神まがつひのかみ。大貝神は分からんが、直日神なおびのかみが蜘蛛を置く? そうは思えない。それに、求められた。突き殺し、血を吸わせた剣を。


禍津日神だ、違い無い。



耶万神、大貝神。二柱ふたはしらの禍津日神が、御導きくださる。そうだ。きっと、そうだ。






「ヴヴ、ヴヴヴギャッ。」


バタッ。


先ほどの巫が叫び、倒れた。・・・・・・御告げか?


「キエェェェェェ!」


バタッ。ピクッ、ピクピク。


叫んで倒れ、動かない。



・・・・・・ガバッ。


「グァハッ。ゴホッ、ゴホゴホッ。」


起き上がって直ぐ、激しく咳き込み、また倒れた。


「ヴゥゥゥ、ギャァァァァァ! ガガガガ、キエェェ。」


ブルブル、ガタガタガタッ。ドタッ。・・・・・・。


「イソゲ。チノアメヲ、アノツルギデ。」



巫が指差したのは海を渡り、儺国なのくにから奪った、鉄の剣。アレは重く、いくさには向かない。飾りだと思っていたが、そうか。



あの剣を軽く振り回せる者が、やまとを手に入れる。競い争い、勝った者にしか扱えない。そんな剣だからこそ、引き寄せられたのだ。耶万に!




「オソレルナ。ウテ。」


バタッ。


・・・・・・ん? 討て、と言ったか。誰が、誰を。


「ユケ、ススメ。ヤマトヲ、ヒトツニ。」


倒れていた覡がスクッと立ち上がり、叫ぶ。






「大王。神の、神の御告げです!」


「そうか。で、どのような。」


「この剣で突き殺し、血を吸わせっ。」


グサッと突き刺し、貫いた。知らせに飛び込んできた男が、バタッと倒れる。


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