表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
はじまり編
4/1527

1-4 友よ

ジル王は出会えた。ジル王子がいたから、生きられた。


先代は塔から。先々代は首を。その前も、その前も。皆、自ら命を絶った。何もなければ次代も。


「わかりました。」


ジル王の手をとり、微笑む。


「ありがとう、友よ。」



数日後、ジル王は旅立った。大往生だった。




数年後。


新たな城主を迎えた。三歳の化け王、エマ。内気な女王。三歳の誕生日、誰かの声が頭に響いた。


「ジル王子に、会いに行きなさい。」


聞こえたのは一度きり。とても優しい声だった。だから、会いに行った。城内に咲く、ユリの花を持って。



「はじめまして、ジル王子。私はエマ。導かれ、参りました。」


格子からユリを差し入れ、微笑んだ。姿かたちは似ていない。けれどジル王と同じ、夜空のように美しい瞳をしている。


「はじめまして、エマ女王。」


ユリを見つめ、微笑む王子。うっとりと見蕩れる。


「その誰かさん、私の友です。」


ハッとして、答える。


「そうですか。」


「ジル王。先代の化け王です。」



思っていたより、ずっと楽しかった。嫌なことは多い。けれど、待っている。優しく美しい王子様が。しかし、その幸せは十年で終わる。




エマは泣かなかった。困らせたくなかったから。けれど、一人きり。残されてしまった。エマは泣いた。泣いて、泣いて、泣いた。一人にしないでと。


涙も出なくなった。フラフラと塔の上へ。飛び降りるためではない。ジル王子の死を伝えるために。


隣国は動かなかった。ただ一言、お任せしますと。エマは怒った。誰かさんから奪った、氷の才を使おう。それで滅ぼしてやろう!


でも、やめた。言っていたから。叶うなら、ジル王のそばで眠りたいと。いつだって、ジル王の話をする時、ジル王子は楽しそうだった。とても、とっても楽しそうだったから。



エマは、化け王は、化け王城から出られない。塀の中、散歩するくらい。だから辛くなると、塔の上から空を見た。ジル王子が言ったから。


ジル王と二人で、空の上から見守っているよ、と。




エマはお伽噺が好きだった。お気に入りは、お姫様と王子様の恋物語。最上階にある自室で、何度も思い描く。


ジル王子みたいに優しくて、美しい王子様。この塔に迷い込んで、私を見つけるの。そして。


「キャッ、どうしましょう。」


枕を抱きしめ、悶絶する。恋する乙女は知っていた。いや、信じていた。


「いつか必ず、エマだけの王子様に会えるよ。」



ジル王子の声がする。私の幸せを願ってくれた。ジル王の、たった一人の友。一人だっていいじゃない。私には、王子様がいるもの。いつか、必ず会えるわ。


そして、恋をするの。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ