7-39 忍びコソコソ話
化け王、御自ら導き遊ばし、御力添えまで。良いなぁ、羨ましいなぁ。と、思って居りました。そうですか。そうなのですね。
ブラン様。良ぉく、御見かけします。お気に入りの止まり木か、食べ物が有るのかな? なんてネ。浅はかなコトを・・・・・・。
いやはや、驚きました。霧雲山は、当てにナリマセン。やっと、祝辺の守が動きました。人の守が王となり、霧雲山の統べる地を守るそうです。
しかし、です。他へ知らせてオリマセン。『問われれば答える』とまぁ、何とも頼り無い。
もし南から使いが来て、『平伏せ』とか『従え』など言われれば、どうします。手遅れですよ。来る前に知らしめねば、戦になる。それが今の、中つ国。
獣谷。祝辺の守に認められた、隠れ里。霧雲山では無く、祝辺と繋がっています。なのに化け王と。アンリエヌと結んだ? ・・・・・・信じられない。
釜戸社に認められた良村なら、良いのです。人と人との繋がり、人と人との結びなので。村が国と繋がり、結ぶ。それだけの事。
霧雲山、祝辺。祝辺の守の多くは、隠。人の守が隠の守を纏めていますが、力が強いのは隠。つまり獣谷と祝辺は、人と隠との繋がり。人と隠との結びに、なるのです!
・・・・・・化け王。御存知ですよね、全て。他は見捨てても、獣谷と良山は守る。そう、御決め遊ばした。
「と、なると。」
「あぁ。」
「で、どうする。」
「どうも、こうも。」
忍びコソコソ、祝はウトウト。社の司は遠くを見つめ、禰宜は頭を抱える。
「北は治まり、穏やか。東は神成山、西は畏れ山。となると、南。」
雲。ズバッと、切り出す。
霧雲山の統べる地から、南に流れる川は三つ。一つ、東。曲川へ続く、蔓川。二つ、中。底なしの湖から流れる、暴れ川。三つ、西。釜戸山から流れる、鳥の川。
東。良村には、蛇神が御坐す。他の忍び、隠れ里とも結んでいる。蔓川、崖の滝、渦の滝。その下の、曲川。
何か起きて通れなくても、困らない。森川から鮎川を通って、神成山の統べる地へ。そこから、南へ行ける。塩でも干し貝でも、要る物を手に入れられる。
それだけでは無い。
知らない事、知りたい事など、知る事が出来る。狩り人、釣り人、商い人。あちこち出向いて、集めている。樵は山で、調べもの。いつ、誰が、誰と、何をしたか。いつ、どこで、どうしたのか。
子を守るため、村を守るため。良村の大人は皆、血を流さずに戦う。危ない事は決して、しない。生きる事を諦めない。死んだら守れないから。
生きたくても生きられなかった、皆の魂と共に生きて、生きて。死んだ親に代わって、子を守り抜く。そのために、死ぬまで生きる!
・・・・・・勝てる気がシナイ。器が違う。
中。獣谷の隠れ里。釜戸社が持っている仕置き場から、少し下った辺り。化け王の才によって繋がれた、闇の道が残っている。
雪雲川から白縫川、暴れ川と進めば、獣谷へ。暴れ川が通れなくなっても、良村がある限り困らない。要る物は何でも、手に入る。
どちらも早稲の生き残り。村が表、里が裏。守るため、生きるために作られた、隠れ里。獣谷を知り尽くし、守りながら攻め、戦う。
・・・・・・強い。強すぎる!




