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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
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7-36 最悪を想定して、守る


五つの忍びが集い、話し合う。耶万やまで見聞きした、全てを。



「耶万の大王おおきみ。アレはマズイ。」


ひのが言い、皆が頷く。


儺国なのくにに仕掛けた。」


しづめ西国にしくに。儺国に潜っていた、梟が言う。


七国ななくにから病に苦しむ、若い人を攫った。」


真中まなか七国ななくに倭国しずのくにに潜っていた、雲が言う。


珂国かのくにへ、放り込んだ。」


鎮の西国。珂国に潜っていた、月が言う。


対国ついのくにへも。」


同じく。対国に潜っていた、影が加える。



耶万の大王は、何を考えて。いや、何も考えていない。気の向くまま、いくさを。風見かぜみが加わったとしても、勝つのは難しい。






やまと。北東から南西へ伸びる、大きな島。あちこちに大国おおくにがあり、そのいづれも戦好き。



遠く離れた地に在る、鎮の西国。周りは灘、背には山。それも険しくそびえ立つ。四十九の国が在り、うち大国は十。


岐国きのくに、対国、崎国さきのくに熊国くまのくに分国いたのくに筐国かごのくに、儺国、珂国。筑国ちのくに糟国ぬのくに。それぞれの大王が、まことの大王を目指し、争い戦う。


幸せな事に海の幸、山の幸に恵まれ、飢える事は無い。病で命を落とす者も出るが、海の向こうから入ってくる薬を飲んで、多くは助かる。戦は多いが、豊かな地。それが、鎮の西国。



真ん中の辺りに、七つの大国。笠国かさのくに駒国こまのくに剛国こうのくに、倭国。瀬国いわたのくに飛国とのくに保国たもつくにが在る。


山に囲まれており、獣が多い。当たり前だが戦、戦で血腥ちなまぐさい。むくろついばむ烏が群がり、人が焼けた匂いが立ちめる。死に至る病が流れ、食べ物も少ない。お腹いっぱい食べる。なんてコトを、夢に夢見る。


戦へ出なくても、病で死ぬ。それが、真中の七国。



東の地。凍えるように寒く、厳しい。冬さえ越せれば、食べ物に困らず、豊か。国と国が遠く離れており、商いが盛ん。燃える水が多く、他の地との商いでは、負け知らず。


多くの神が御坐し、和やかで穏やか。祝も多く、慎ましく生きている。争いや戦より、大きな獣に襲われ、命を落とす者が多い。それが、中の東国ひがしくに



真中の七国の東に、中の東国。西に、中の西国。耶万は中の東国、大貝社が統べる地にある。ずっと北には、霧雲山の統べる地。南には海。平たい地が広がる、豊かな国なのに・・・・・・。




あかうた。二つの忍びが一人を残し、良山よいやまを目指す。他の忍びは里に戻り、頭と長、祝に伝えるだろう。耶万で見聞きした、全てを。


急ぎ、伝えねば。我らが知り得た全てを。力を合わせ、この地を他から守るために!



耶万から溢れた闇は、恐ろしい速さで広がる。鎮の西国からつわものが押し寄せ、戦になる。あの毒が有る限り、耶万は負けない。


負けっぱなしじゃ戻れない。だから兵は、北を目指す。川を上り、この地へ。そうなる前に、備えなければ。


この和やかで穏やかな暮らしを、守らなければ!


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