表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
388/1634

7-31 退避命令


「チュウ!」


「鼠神?」


おにたち、ビックリ。


「南で、しきモノが暴れ出した。蛇の姿をした、闇。」


蛇じゃ無くても、蛇の姿をしていれば分かってしまう。鼠神、スゴイですね。


「急ぎ、蛇神へ使いを。」


エェェ! ・・・・・・顔を見合わせ、頷く。


「ハイッ。」






「何だぁ?」


耶万やまに潜っていた、雲が叫ぶ。


「どうした。」


影が問う。


「闇だ。あんなに深い闇、見た事が無い。みんな急げ!」



五つの忍びは、北を目指す。耶万を調べ尽くし、話し合うために。戻るのは夜。なのに急いだのは、聞いたから。


雲、月、ひの、梟は、影に従った。心消こけしから飛んで来た社憑き、もやが言ったから。『ぐに逃げよ』と、前足で耶万を示して。


沢出社さわいでのやしろの祝には、先読の力がある。いつ起こる事なのか、はっきり分かるワケでは無い。しかし態態わざわざ、使わしめを走らせた。


いくら狐の妖怪でも、心消から耶万までは遠い。なのに急がせた。






「マズイ事になったな。」


「あぁ。」


あかうたが見合う。二人とも、嫌な感じがした。片付けは済んでいる。緋が動けるのは夜。今は昼、目が辛い。それでも。


「急ぎ。」


「逃げよう。」


スッと、風のように駆ける。


「良く出た。」


くろかしらは何を。」


玄は謡狐うたいのきつね。謡の頭は禰宜ねぎ。弱いが、先見の力を持っている。



謡い人の隠れ里、かし。心を読む事が出来る、齋橿いつかしの一族が作った里。目眩めくらましの力を持つ、樫の一族と力を合わせ、里を強くした。齋橿と樫を繋ぐのが、厳樫社いつかしのやしろ


玄は子狐の時、人の子に攫われ、犬扱いされた。逃げ出し捕まり、なぶられる。その時、助けたのが樫の一族。以来、代々の禰宜に仕えている。



「急げ。闇に飲まれるぞ!」


走りながら叫ぶ。形振なりふり構って、いられない。嵐のように駆ける。




使わしめは、隠か妖怪。祝の力を持たない人には見えない、見せない。その使わしめが、人に姿を見せた。


緋は玄を。桧、月、梟は靄を。生まれて初めて、使わしめを見た。そして、全てを悟る。



霧雲山の統べる地の忍びが、北の地から逃げた。誰一人、闇に飲まれず。誰一人、傷を負わず。







「フフフッ、フフッ。フフフフ、フフフ。」


男の声なのか、女の声なのか、全く判らない。


「逃がさない、逃がせない。フフフッ、フフフフフ。」


絡みつくような声と、沈むような声。


「行かないで・・・・・・。フフッ、そばにいて。」


縋るような声と、甘えるような声。



ユラユラ、グラグラ。深い、深い闇が広がる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ