7-30 蛇センサー
空の旅を楽しみ、雲井社に戻ったマル。力を使って疲れたのか、ウトウト。離れでスヤスヤ眠り、パチッと目が覚めた。
良村でなら、手伝いをしたり、社を清めたり、何か出来る。
ここは雲井社。マルは社に招かれた、祝の力を持つ子。蛇神の愛し子。つまり、する事が無い。
乱雲山は険しく、危ない。頂辺りは平たいが、少し離れると真っ逆さま。風の流れも速い。というより、激しい。幼子など、木の葉のようにヒラヒラ、吹き飛ばされてしまう。
良山も険しいが、所どころ開けている。犬か大人が付いているので、ノビノビ遊べるのだが・・・・・・。
社と子の家の間でなら、お好きに。そう言われ、マルコと楽しく、木の枝ポーン。大蛇は人の姿になり、ニコニコ見守る。
「へっ、蛇神が。ゴクリ。たたっ、楽しそうに。」
乱雲山で暮らす、隠や妖怪たち。恐いもの見たさ、なのだろう。ワラワラ集まり、ヒソヒソ。
愛し子に出会い、ユッタリのんびり過ごしている。大きいだけで、どこにでも居そう? いえいえ。はじまりの隠神、なのですヨ。
幾万も生きているので、呼び名も数多。それはもうイロイロ。継ぐ子に社を任せたとはいえ、神は神。国つ神を辞めたダケの、隠神。
数多ある霊山の中でも、霧雲三大霊山。霧雲山、乱雲山、天霧山の強さは桁外れ。
表に国つ神、裏に隠神。人の世と隠の世、異なる流れの中で二柱。力を合わせ、お守りくださる。
乱雲山の隠神は鼠、霧雲山の隠神は狗、天霧山の隠神は烏。お守りくださる隠神は、隠の世から御出に為らない。
神議り? 国つ神に押しぃ、コホン。御任せし、山をお守りくださる。
その昔。霧雲山、隠の世。
中つ国では神議り。大社にて、宴の真っ最中。隠の世では、何かあれば直ぐ議る。そこで国つ神を見習って、宴を開こうと相成った。
神とはいえ、食物連鎖から逃れられない。鼠と蛇、見つめ合う二柱。その運命や如何に!
・・・・・・パクッ。
あな恐ろし。熟れる前に、御助けせねば。
蛇神の腹の上で、狗神が跳ねる。・・・・・・クワァァ。ムニャムニャ。
ならば、と熊神。思いっきり、ドスン。すると、ペッ。良かった、良かった。
隠なので、死にません。死にませんが、残ります。鼠神は授かりました。蛇、探知機能を。
時、流れ。
「蛇、蛇がぁ。」
ガクガク、ブルブル。
「いらっしゃいません。中つ国に留まると、仰せです。」
チュウゥゥ?
「はい。真に御座います。」
鼠神、ホッ。大蛇が山に入ってから、怯えっぱなし。
「贈り物だと、こちらを。」
良山銘菓『炒りカヤ』。薄皮つきで、お味はポテチのよう。
「・・・・・・皆で。」
鼠神に仕える隠たちが、美味しく頂きました。




