7-29 殺しのライセンス
「私は大王の、耶万の大臣でした。」
「大臣? 臣より偉い人が、なぜ。」
フク。思わず、前のめり。
「それは・・・・・・。大王の心を推し量らず、考えを述べたからです。」
私はタタ。妻と、娘が一人。耶万で私の帰りを信じて、待っています。だから早く、戻らなければ!
・・・・・・私は、死んだのですね。動けません。手も足も、指も。なぜでしょう、真っ暗なのに。
あなた様は、神ですか? ここは根の国でしょうか。ハァ、すまない。情けないなぁ。死んでしまったよ。
「・・・・・・死んでは、いませんよ。まだ。」
「そっ、それは。真でしょうか。」
「真です。」
「良かった・・・・・・。」
死なないでいるダケで、生きているとは言えない。耶万の毒に侵されて、人で無くなった。
神でなければ、神に仕える人。社の司、禰宜、祝。
耶万では感じなかった、あたたかい光を感じる。先の幼子と、同じ光だ。
そうか。私は死ぬ前に、話さなければならない。知っている事を、残らず。全て。
その前に、どうしても知りたい。
耶万を出てから、かなり経っている。あの大王が、おとなしく待っているとは思えない。
・・・・・・もしかすると。
いや、違う。違っていてくれ。思い過ごしだ。そうあって欲しい。
「耶万の狙いについて。知っている事、全て。お話します。」
うわぁぁぁ。いくら何でも、酷過ぎる。いや知ってたよ。多くの忍びが、潜ってるからさ。イロイロ入ってくるんだ。それでもさぁ、信じらんねぇ。
耶万にも、マトモな人は居る。少ないけど。呆れるくらい、少ないケドさ。居るには、居るんだよ。少ないケド。
大王やら、跡継ぎやら、社のヤツら。
控え目に言って、狂っている。耶万に限ったコトじゃ無いが、人ってのは力を持つと、狂う。
だからさ。力を持つ家に生まれた子は、厳しく育てられるんだ。驕るな、高ぶるな、慎しめ、弁えろ。とまぁ、骨の髄まで叩き込まれる。
長やら頭やら。守る人、言の葉を使って生きる人は、強い。
力だけじゃ、守れないから。力だけじゃ、生きられないから。助け合うために、生き残るために、努めるのさ。
そういう長や頭が守る、村や国。どこも穏やかで、豊かだ。しっかり守って、備えている。川田、岩割、馬守。日吉、蔦山、大平。挙げれば、キリ無いぜ。
三鶴、玉置、豊田。北山、東山、川北。武田に飯田。釜戸の裁きで、仕掛けた長たち。残らず死んだ、裁かれた。
戦好きでも、懲りたんだろう。鳴りを静めて、周りを見ながら細細と暮らしている。やらかせば、死ぬからな。
それに比べて、南のヤツら。
何を考えてるんだ? 死にたいのか。殺されたいのか。ヨシ! 待ってろ。叶えてやる。こちとら忍び、持ってるからヨ。チラッ。
そろそろ南から戻ってくる。
集めた事を明かして、話し合う。祝は出られないから雲、この度はオレが出る。皆、驚くだろうなぁ。・・・・・・ハァ。




