7-24 困るんだよねぇ
津久間社、大貝社、具志古社。どの社も、難しい。
南の地は、血を多く吸っている。戦や争いを嫌い、禍津日神を避けて御出でだ。
大稲社、大倉社、実山社。
蛇を使わしめとし、闇とも近いが、難しかろう。三柱で結ばれ、禍に備えて御出でだ。それに直日神で在らせられる。禍津日神とは、何とも・・・・・・。
良那社も、難しい。良神と那神。二柱で、一神。とても睦ましく、思い合って御出でだ。神議りの折、言の葉は交わしてくださるが、何とも。
戦好きな村か、国。となると早稲、風見。ウン、無い。
早稲神は戦や争いを嫌い、引き籠って御出でだ。神議りでもない限り、社から御出にならない。
早稲の人は戦好きで、闇に近い。早稲神は戦を嫌い、闇を避けられる。
・・・・・・諦めよう。
風見神は耶万神と同じ、禍津日神。使わしめは蛇。
闇に近く、禍の種を蒔く事を、生き甲斐にして御出でだ。しかし直日神に敗れ、コソコソ隠れるようにして、蒔いて居られる。
頼れば何とか。しかし、当てにならない。直日神が現れ為されば、少しも迷わず直ぐ『裏切り? 生き残りを選んだのだ』とでも、仰って。
・・・・・・ハァ。
神は、人の思いから生まれる。耶万の人は、欲が深い。神に祈れば、何でも叶うと。神に願えば、何でも許されると。
耶万社には、祝も禰宜も居ない。見える社の司はオソロシイ事に、神より王を崇める。
巫にも覡にも、見えない聞こえない。有りもしないのに力が有ると、力を持っていると信じて、疑わない。
耶万神は、禍津日神。違い無い。違い無いが、違うのだ。
確かに、伊弉諾尊が残された言の葉によって、酷く傷つかれた。だから女を傷つける神にだけは、なりたくない。そう仰って、人に寄り添われる。
なのに、なのに耶万の人は!
「こんにちは。雲です。イロイロ抱えてらっしゃいますね。」
ニコッ。
「・・・・・・えっ?」
キョロキョロ。
「見えますか、蛇サン。オレには見えてますよ。声も聞こえます。」
雲? 空に浮かぶ? 人にしか見えぬが。
いや待て、雲と言ったな。確か、霧雲山の統べる地。天霧山の矢弦社。祝が力を与えたと。
山で暮らす全ての人に、祝の力を分け与えた。その中から強い者が忍びになり、あちらこちらで動いでいる。噂だが、そう聞いた。大きくは、違って無いハズ。
「何の御用でしょう。」
「お教えしようと、思いましてね。」
早稲は諦めたよ。
北を攻めない、仕掛けない、目指さない。そう誓って、引いた。死にたくナイもんネ。あの長、賢いよ。
言っとくケド、脅してナイよ。向こうから、言い出したコトだから。
風見も諦めた。
勝ち目、無いからね。早稲と組んだのにさ、仕掛けようとしたんだ。だ・か・ら、フフッ。分かる?
死にたくない。だから北を攻めない、仕掛けない、目指さない。そう誓ったよ。
耶万、何とかしてよぉ。困るんだよねぇ。トテモ。




