7-20 食い放題
逃げるように、社の離れを出たゲスども。転がるように、大王の元へ。
「い、急ぎ。申し上げます!」
「何だ。」
「タタの娘が、し。死んでましたぁぁ。」
「何だと? 誰が殺せと言った。」
「い、いいえ。違います、殺してません。見に行ったダケです。どうしているか、見に行きました。」
ガタガタ震えながら、ゲスが言う。何をしに行ったのか、言わない。言えない。
『見に行け』なんて、誰からも言われてナイのに、見に行った。ガハガハ笑いながら、出て行った。ゾロゾロ引き連れて、出て行った。
多くの人が見ていた。多くの人に、気付かれた。
ゲスはゲス。ゲズの行いなど、お見通し。何しに出たのか、何しに行ったのか、全てバレている。
「誰が殺せと言った。」
耶万の大王だ。言い包める? んなコト、出来るか!
「誰が、殺せと?」
冷や汗が止まらない。
「答えろ!」
「ハイッ。」
見に行ったんです。罰を与えた時、動かなかったので。見に行ったんです。見に行ったダケです。
一人では心細くて、皆で見に行ったんです。
酒に酔って、大騒ぎしていたゲスども。揃って真っ青。冷や汗が滝のように流れ、止まらない。ガタガタ、ガタガタ、震えっぱなし。
「殺せ! 痛めつけ、縛り上げろ。獣に食わせる。」
「ヒィ、お許しを!」
ビタッと平伏す。
「ゲスめが。」
大王に見下され、気付く。殺されると。
抜け出したゲスども。残らず痛めつけられ、縛られた。馬に引かれ、国の外へ。
耶万は平たい地にある。田も畑も多い。囲いの中は、守られている。しかし外は・・・・・・。
「だ、だずげで、ぐれっ。」
「ごろじで、ないっ。」
「じんでだっ。」
「じんじでぇ。」
ドッドッドと、馬が離れて行く。縛られたまま動けない。暫くすると、何かが近づいてきた。人か? 誰か助けに、来てくれたのか?
「ワヲォォォンッ!」 マツリダァァァァ!
「ワヲォォォン!」 アツマレェェェェ!
タッタッタ。タタタタッ。ザッ。ダダッ。
「ヴゥゥゥ。」 クオウゼ。
「ヴゥゥゥ。」 ハラペコダ。
「ヴゥゥゥ。」 マダカヨ。
「ワヲォォン!」 クイマクレェェェェ!
ガツガツ、ガツガツ。ガツガツ、ガツガツ。
宴が始まった。
新鮮なゲス肉に齧り付く、野良犬たち。それはそれは、良い食いっぷり。生きたまま食われ、カッと目を剥く。
叫ぼうが喚こうが、止まらない。
腹、首、頬など。あちこち食い破られ、血が噴き出す。ワンコ、大喜び。
祭りは続く。満たされるまで。




