7-15 このままでは
モヤモヤ、重いなぁ。喉に手をグッて、される感じ。嫌だなぁ。
息が、何だか苦しい。でも負けない。止めてしまったら、この人。ずっと、ずっと、人に戻れない。そんなの、いけない。嫌だもん。
落ち着いて、落ち着いて。力を集めて。糸みたいに細く、細く。ゆっくり集めて、ゆっくり進める。
ポワッと、マルの体から光が。そのまま丸く、大きくなって包む。
モヤモヤ、モヤモヤ。キレイに、なあれっ。キラキラ、キラキラ。お水のように。それからフワフワ、お空へピョン。
イイコ、イイコ。モヤモヤ、イイコ。
帰ろう、お空へ。フワフワ、フンワリ。モクモク、雲に。それから、それから、優しい雨に。シトシト、サラッと舞い降りて。乾いた地をね、潤して。
命の水は、グルグル巡る。キラキラ輝く、優しい光。お空に帰るか、お家に帰る。ユラユラ、ニコニコ。帰ろうね。
ポワポワ優しく、マルを包む。ゆったり美しく、マルを包む。
「・・・・・。・・・・・・? ・・・、・・・? 」
イイコ、イイコ。お口に出して。ゆっくり、ゆっくり。
「・・・・・、こ・・・は・・・。」
どこだ?
オレは確か、滝を。力尽きて、落ちて。それから・・・・・・。そうだ、耶万の夢。薬を口に。それで・・・・・・。
何が夢だ。夢なモンか、毒さ。
誰かの声が聞こえた。ペチペチ叩かれて、『起きろ』と。
・・・・・・あれは、どこの人だろう。耶万の人じゃ無い。他の・・・・・・。
きっと北の地で暮らす、良い人だろう。水から引き上げられて、それから・・・・・・。
「れきたっ! れきたよ、おりょち。」
目を輝かせ、大喜び。
「あぁ、出来た。」
人の姿になった大蛇に撫でられ、ニッコリ。
「キャ、キャン。」 オメデトウ、ヨカッタネ。
マルの膝に前足を乗せ、尾を振るマルコ。
「マルさま、ありがとう。ここからは、私に任せて。」
フクがマルの頬に手を当て、微笑んだ。
「はいっ。おねあいしますっ。」
ニコッ。
「マルさま。さぁ、こちらへ。」
ツルに言われ、フクにお辞儀。それからスクッと立ち上がり、外へ。
入れ替わりにゴロゴロ、キラ、コン。雲井の三妖怪が、フクの元へ。囲むように、離れて座る。
「マルさま。雲井社にて、お待ちください。」
「ツルさん、もっ、こちぃら、に?」
「はい、残ります。大蛇神。」
「フム。行こう、マル。」
「はいっ。おいで、マルコ。」
「キャン。」 ハイッ。
大蛇がフワッと、蛇の姿に戻った。マルコを抱いたマルを背に乗せ、ゆったり舞い上がる。左の手にマルコを抱え、右の手を振る。
ツルも微笑みながら、手を振り返す。姿が見えなくなるまで見送ると、ツルは戻る。笑顔から、真顔へ。
耶万の罪人から、残らず聞き出す。
その全て、正しく使わなければ。霧雲山の統べる地は、強い力で守られている。しかし続かない。力が弱まっている。
このままでは禍が、渦を巻くだろう。




