3-5 罪と罰
「き、聞こえない。わ、わからない。覚えてない。覚えてないんだ。オレは悪くない。オカシイんだ!だから、悪くない。悪くない!たっ、たすっけ・・・て。」
「タツの父さんは、強くて賢かった。好いた女のため、一人子のために、あの長と戦った。それだけじゃない。何度も、何度も、山奥にある村長にな、頼み込んだんだ。新しい村を作らせてくれと。断られても、断られても、何度も、何度も。」
「し、知らない。オレ、聞いてない。知らない!」
「タツの父さん、早稲の長に殺される前にな、山奥の、ある村の長に言ったそうだ。『オレはいい。子だけでも助けたい。だから、村を作れないのなら、子を引き取ってくれ』って。」
「嘘だ。オレは知らない。聞いてない。」
「嘘じゃない。オレの父さんが言ってた。」
「ノリの父さんだけじゃない。カズの父さんも言ってた。それだけじゃない。タツの父さんは、強いって。」
「強くない!弱い、弱かった。オレを残して死んだ。助けてくれなかった。」
「強かった。残される子のために戦ったんだ。」
「戦った?助けてくれなかったくせに。」
「助けられるわけ、ないだろう。ここ、早稲だぞ。わかってるか?早稲からは逃げられない。だから、こんなにいるんだろ。」
「タツ、オマエはな、父さんが残してくれた光を潰したんだ。新しい村を作るはずだったのに。」
「え?村、作るのか?どこに。」
「もう作れない。オマエのせいだ。」
「こ、コウ、コウを攫おう。あの子なら作れる。そう、あの子なら、誰も出来ないことが、出来るはずだ。そうだ、あの子、コウを攫おう、そうしよう、ノリ。」
「断る。」
「カズ。」
「断る。」
「シゲ。」
「断る。」
「コウはな。おそらく、稲田のジロの孫だ。川田のゴロが、子と同じだと言ってる。それだけじゃない。オマエに子を殺されたヒデ、ゴウ、ヨシもだ。」
「な、んで?そんなこと、シゲ、オマエ。」
「茅野の子を探している時、聞いた。なあ、知ってたか?茅野の子も、タツなんだって。」
「し、ら、ない。オレ、悪くない。オレ。」
「知らなかったか。まあ、そうだろうな。知っていても、助けなかっただろう。」
「オレ、悪く、ない。頭の中で、響くんだ。それで、オレ。止まらなくなって、わからなくなって、それで、気がついたら。だから、だから?だから。オレは、オレは悪くない。」
「違う!確かに、お前はオカシイ。でもな、だからって何をしても許されるわけじゃない。罪は罪。償え。罰を受けろ。」
「罪って何だ?罰って何だ?難しいこと言うな!オレが知らないからって。」
「罪はな、悪いことや、背くこと、禁じられていることをして、報いを受けなきゃいけないような、そういうもののことだ。」
「悪い?人に言えない?危ない?殴られる?ような、こ、と。」
「ああ、そうだ。」
「罰はな、罪や過ちのある者に負わされる、懲らしめだ。」
「悪い?言えない?危ない?殴られる?ような、こと、したら?殴られる。もうしないって、言うまで、ずっと、ずっと、殴られる。」
「ああ、そうだ。」
「さ、三人で?オレ、の、こと、殴る。」
「いや、殴るだけじゃ足りない。」
「じゃあ、どうする。」
「タツ、何度も言わせるな。」
「い、嫌だ!助けてくれよ。お願いだよ。助けて!助けて・・・・・・。」




