7-11 ビックリ仰天
・・・・・・耶万の人。きっと苦しくて辛くて、悲しいよね。
守りたい人をね、『守りたければ言う通りにしろ』って言われたら。そしたら、そうするしか無いじゃない!
お話してるの、聞こえたの。耳をすませて、聞いたんじゃナイよ。
父さんは祝人で、清めの力があった。弱かったけど、持って生まれた。だから北山社で、育てられた。
母さんには、祝の力が無かった。出なかった。鴫山社の、祝女だった婆さまには、守りの力があった。だから私に、守りの力が。
私は清めと守り。祝の力を二つ、持って生まれた。なのに使えなかった。だから闇に飲ませて、使えるようにしようと。・・・・・・虐められた。
なぜ二つも? そう思った。でも、今は違う。
根の国の穢に触れてしまったオミさんを、祝の力で助けた。その時、思った。苦しんでいる、困っている人を助けたい、守りたいって。
私には強い、祝の力があるもの。持っているもの。
「・・・・・・あえ?」
キョロキョロ。
「キュゥ。」 オハヨウ。
マル、ここは乱雲山だよ。雲井社の、離れだよ。
「おはようございます。はじめまして、マルさま。私はツウ。」
「おはよぉ、ござい、ますっ。マルれす。このコは、マルコ。」
「キャン。」 ヨロシク。
良山では、村の泉から汲む。コンコンと湧き出る、美しい泉。転んでも沈まない、と思う。
乱雲山では、雲井湖から汲む。大きいから、転んだらブクブクって、沈みそう。
良村では瓢箪を使うけど、乱雲山では器を使う。・・・・・・重い。プルプルするよぉ。
「重いだろう? 汲んであげよう。」
「ありが、とぉ。」
わぁ、力持ち。平たい器に移してくれた。バシャバシャ洗って、乾いた布で拭う。ふぅ、スッキリした。
「オレはコウ。君、マルだね。」
「はいっ。このコは、マルコ。」
「キャン。」 ヨロシク。
わぁ。ツウさんとコウさん、とっても仲良し。見つめ合って、ニッコリした。兄さん? 姉さん?
・・・・・・そんな感じ、じゃナイ。コタさんとコノさんとは、違うもん。
「おいで、マル。山歩きに行こう。」
「はいっ。コウさんの、犬。どこれすか?」
「オレは、飼ってないよ。」
マル、キョトン。
「この山はね、とっても険しいの。小さい子だけじゃ、歩けないのよ。」
ツウに言われ、コクンと頷く。
「わかり、ましたっ。よろしくぅ、おねがいっ、しますっ。」
ニコッ。
雲井社に戻って直ぐ、ゴロゴロは妖怪を集め、話した。
『良村のマルがフクを助けるため、乱雲山に来る。あの、蛇神の愛し子だ。傷一つ、付けぬように』 と。
大名行列、はたまたモーゼの奇跡か。行く先先で、道を譲られた。マルもマルコも、ビックリ仰天。




