7-10 信じて、助ける
マルには祝の力がある。己を守るため、生まれた時から使い続けている。とはいえ強いれば、体を壊しかねない。それに何より、まだ幼い。
隠の世を通れば、良山から乱雲山まで一っ飛び。しかし、人の子に耐えられのか?
大蛇の背に乗れば、風が吹きつける。ゴロゴロの背に乗っても、同じ。マルを抱えて飛べば、守れるが・・・・・・。
「背負子にマルを乗せて、人に化けたオロチ様が背負う。というのは、どうだろう。」
カズが言う。
「人の姿でも、飛べるのですか?」
コタが問う。
「飛べるが、怖くないだろうか。」
大蛇が、ポツリ。
「一っ飛び、てのがなぁ。」
ノリが切り出す。
舟を漕ぐのは、後ろ向き。
初めはドキドキするが、そのうち慣れる。ゆっくり進むし、ゆっくり止まる。マルは舟に乗るのが好きだから、後ろ向きでも。舟なら、案じる事は無い。
後ろ向きに、背負って行く。
初めはドキドキするが、そのうち楽しくなるだろう。いつもと違う、高い所から見るんだ。走れば怖いだろうが、歩くなら。
マルは小さくて軽いから、背負子に乗せられる。
ピョンと飛ぶだけなら、怖くない。子らも皆、キャッキャと楽しそうに、飛び跳ねている。でも高く、早く飛び続けるなら? どう考えても。
「・・・・・・恐ろしそう。」
コノが呟く。
「マルが眠っている間に、漆を塗った箱籠に入れて、抱えて運ぶ。ってのは、どうだろう。」
シゲが言う。
「眠る前に話しておけば、目が覚めても驚かない。」
コタが頷きながら、言う。
「青野の箱籠を使おう。少し重いが、オロチ様なら。」
シン、ニッコリ。
話し合いの末、漆塗りの箱籠にマルを入れて、雲井社へ連れて行くと決まった。凍えないように、マルコも。仔犬を抱いていれば、ヌクヌクと眠れる。
「と、決まった。」
はい、分かりました。温かくして、入ります。
「フム、好い子だ。」
頭をポンポンされ、チョッピリ照れる。
「キャ、キャン。」 ボクモ、ワカリマシタ。
きっとマルなら、多くの人を救える、助けられる。ボク、信じてる!
モヤモヤを清めた事はあるけど、包んで清めるのは初めて。出来るかな? ううん、違う。信じて、助ける。
「そうだな。」
ねぇ、大蛇。ゴロゴロさまは、どちら?
「雲井社へ戻られた。」
そう、なの。
「クゥン?」 ネコガイイノ?
犬だって、モフモフだよ。
「朝になれば、会える。」
そうね。ドキドキするけど、ワクワクしちゃう。だって、助けられるのよ。
「月が上に出たら、乱雲山へ行く。」
はいっ!
「ノンビリせんと、眠れぬぞ?」
そっか。ノンビリしようね、マルコ。
「クゥゥン。」 ウフフッ。
マルに撫でられマルコ、ウットリ。




