表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
耶万編
364/1635

7-7 足りないモノ


一人は、つるばみ大木おおきの辺りで。一人は、渦の滝壺で。一人は、滝を登ろうとして力尽き。一人は、滝の上で力尽き。一人は、重ね崖の近くで。一人は、崖の滝に浮かんでいた。仰向あおむけに浮いていたので、助かった。


・・・・・・生きていると、言えるのだろうか。死ななかった、死ねなかった。




「清めと守り、二つの力があれば!」


フクが叫ぶ。


「・・・・・・清め?」


「・・・・・・守り?」


「・・・・・・二つ?」


三妖怪、見合って頷く。


「フク、少し待て。頼んでみる。」


雲井神くもいのかみの使わしめ、ゴロゴロ。ニャンと心当たりが!






気の毒だと思う。


雲や、良村よいむらの人から聞いた。耶万やまから送られてくる人は、他から攫われたり、守りたい人を守るために、毒をあおる。


死ぬと解って、いくさに出る。戻れないと解って、戦に出る。使い捨てられると解って、戦に出る。


傷ついて倒れる。それでも休めない。耶万の夢を、飲みたくないのに呷る。傷ついているのに、戦う。倒れたのに、戦う。それでも休めない。で、また呷る。



「とっても、とっても。」



吐き出したいでしょう、きっと。飲みたくないでしょう、きっと。それでも吐かずに、それでも飲み込んで。


壊れたんじゃない、壊された。めたんじゃない、止めさせられた。人なのに、人じゃ無くなった。戻りたいのに、戻れなくなった。



「なぜ助け合って、生きられないの。」



雲から聞いたわ。南にも、豊かな村は多いって。


あの早稲わさも、豊かなんですって。水があって、日当たりも良い。山が近くて、風が通る。


滅ぼされた沼田も、豊かだったそうね。早稲と違うのは、戦い慣れていなかった事。



・・・・・・いくら考えても、解らない。なぜ? なぜなの。


困ったら頼る。ゆとりがあれば、手を差し伸べる。助け、助けられ、助け合う。そうして生きてゆく。それが、人でしょう?



「私、甘い?」



天霧山へ行き、雲から話を聞きたい。良山よいやまへ行き、良村の人から話を聞きたい。釜戸山へ行き、エイさまと話したい。霧雲山へ行き、タマさまと話したい。


もっと力が有れば、叶うのに。



私に足りないモノ、分かっているのよ。分かっているのに、どうしようも無い。いいえ、違う。おにになる心構え。継ぐ子、コウ、ツウ。私が隠になっても、きっと。




「フク!」


「ならん!」


キラとコンが叫ぶ。



フクはめぐし子。雲井神の、愛し子なのだ。誰でも良いワケじゃ無い。愛し子が祝になった。その愛し子を、隠に?


そこまで思い詰めて・・・・・・。フク、許せ。気づかなんだ。




「愛し子にしか、出来ぬ事が有る。」


子狐に化けた、コン。


「辛ければ、ゆっくり休め。」


大きくなった、キラ。



モフモフに挟まれて、フク。ニッコニコ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ