7-6 もう、どうすりゃイイの?
霧雲山の統べる地において、決して許されない事。アンリエヌで禁じられている物、全て。作らない、持たない、持ち込まない。
もし破れば、死に至る。骨も残らない。
ブランの目は、化け王の目。ブランの耳は、化け王の耳。隠せないし、逃げられない。
霧雲山が在るのは、やまと。
化け王はアンリエヌ以外、どうなろうが構わない。それでも、霧雲山の統べる地を気にかけるのは、エンのため。エンとの約束を、守るため。
「なぜかしら。」
人を人で無くする。そんな毒だと解っていて、なぜ使うの? この地が豊かだからって、そんな毒。
「村は強いが、国は弱い。大国は脆い。」
悲しそうに語る、キラ。
「泉が涸れ、川が干上がる。その時、愚かな人は考える。奪おうと。」
ウンザリしながら、コン。
「水を求めて血を流す? 解らない、解りたくも無い。」
怒るフク。
耶万は、夢を見た。
川を上った先に、豊かな地が広がっている。水も人も、食べ物も多い。全て奪い、川を使って運べば、もっと豊かになる。もっと大きな国になる。
耶万は知らない。祝の力を、強さを。アンリエヌとの繋がりを、化け王の恐ろしさを。
「良村や隠れ里の助けになる事、ないかしら。」
何だかんだ、守られるばかり。
「まずは。」
「捕らえた耶万を。」
「それからだ。」
三妖怪、ニコッ。
「はい。」
フクも、ニコッ。
霧雲山の統べる地に、危ない物を持ち込んだ。薬でオカシクなっても、罪は罪。罰せられる。
釜戸社で裁かれるのは、釜戸山の灰が降る地での事。人のイザコザを収めるのが、釜戸社。
雲井社で裁かれるのは、霧雲山の統べる地の、外から持ち込まれたイザコザ。勿論、妖怪のイザコザも収めますヨ。
耶万はアブナイ薬、というより毒を持ち込んだ。許されない。魂を剥がしたうえ、火炙り。とても分かりやすい話なのだが、ヤヤコシイ。
耶万の夢は、その毒を強め続けている。フクの力を以てしても、聞き出せない。
救いたくても救えない。もう、どうすりゃイイの? フクじゃなくても、頭を抱えます。
「耶万の人よ。名を、聞かせて。」
「アァァァァァァァ!」
「アァさんね。」
いいえ、違います。きっと、違います。
「で、アァさん。」
フク、押し通す。
「ギャァァァァァァ!」
「辛かったわね。」
人で無くなっても、人として扱う。
「懐にあった、この袋。見覚え、有るわね?」
「ヲォォォォォォ!」
「この地に来るのは、何のため?」
「アァァァァァァァ!」
この度も、聞き出せなかった。
耶万から良山まで、遠く離れている。良村のムロの話によれば、来たのは六人。




