7-4 何れにせよ
兵が足りない。風見は使えるが、早稲は。
兵も食べ物も送れないからと、毒を差し出した。風見の毒より、使いやすい。だから許した。しかし・・・・・・、何を考えている。
釜戸の裁きにより、罰を受けた。生きては、いるらしい。男が一人、兄と共に罰を受けた。これも、生きていると聞く。
「釜戸山、か。」
「大臣?」
「蔦山の動きは。」
「変わり、ありません。」
風見と早稲が組み、川から行ける蔦山を攻めた。兵を多く送り込み、楽に勝てる筈だった。なのに、負けた。
川を取り、山を目指す。近づけず、回り込む。一人、また一人。スッと消え、アッサリと。
山の中で戦えば、負ける。気づいた時には、遅かった。
どこからともなく、現れる。矢の雨が降る。尽きる事なく、降り続く。
どれだけ蓄えても、いつか尽きる。食べ物が尽きれば、必ず出てくる。だから待った。待ち構えた。なのに、出てこなかった。
・・・・・・蔦山は備えていたのだ、戦に。
「早稲は、どうだ。」
「村の立て直しに努め、励んでいます。加えて、女の扱いを変えました。産ませるためでしょう。多くの男を宛がい、試しています。」
ハッ、早稲だな。父は誰でも良い。産めよ増やせよ、か。まァ良い。早稲のは、強い。北へ送ったのが死に、減ったからな。
業を高めて、戦わせる。技を磨いて、戦わせる。術を叩きこみ、戦わせる。一つでも欠ければ負けると、良く解っている。
「差し向けますか。」
「いや、捨て置け。」
今、早稲に背かれれば、風見も失う。どちらも耶万から、離れようとしている。引き際を誤れば、滅びかねない。沼田のように、な。
水にも土にも恵まれ、栄えていた。守りを固め、備えていた。それでも滅んだ。引き際を誤り、滅んだ。
長が迷えば、人が死ぬ。若いのに任せて、残れるワケが無い。なのに、あの長は引いた。
早稲の長は若いが、賢い。狡賢い。見極め、動ける。早稲社、社の司。生き残る力は、並外れて強い。健か者だ。
「早稲の祝は、まだ見つからんのか!」
「はい。あちこち聞きこみましたが、『遥か昔に死んでから、早稲に祝は居ない』と。」
社の司に、祝の力は無い。あれば直ぐ、勢いを盛り返す。もっと栄える、もっと広がる。
早稲神は、食べ物の神。祝が居なくても、社の司が居れば、守るのか?
どんなコトになっても、早稲は残っている。国にする気は無く、村のまま。食べ物と力を蓄え、兵を育てる。他に遣り、貸しにする。
早稲の、神が望むのか。早稲の、民が望むのか。
何れにせよ、早稲はコチラに。敵に回せば、風見と攻めてくる。耶万は大国。保つためにも、このまま。
「早稲を出た、余所者は。」
「里は分かりませんが、村は分かりました。良村です。曲川を進んだ先に、隠れるように。」
「攻め落とせ。」
「ハッ。」




