7-3 骸ゴロゴロ
「な、何だと!」
「大王が、お亡くなりに。」
またか、またなのか。
耶万の大王は、早死にする。そんな噂が広まり、足元を見られている。このままではイケナイ。何とか、しなければ。
考えろ、なぜ死んだ。ピンピンしていたのに。モリモリ食べていたのに。
「調べろ。」
「は?」
「なぜ死んだか、調べ上げろ!」
「ハイッ!」
耶万だけじゃない、他も同じ。長が死ぬ、王が死ぬ。なぜ、なぜ、なぜ。
・・・・・・心当たりは、ある。あり過ぎる。
北だ。霧雲山を、山裾の地を欲し、攻めてからだ。次から次へ、悪い事ばかり。
北の地は、禍を招くのか? 話に聞く豊かな地は、耶万を豊かにするのでは、なかったのか?
歯向かう国も逆らう国も、思い通りにならない国は全て、攻め滅ぼした。
男は戦へ駆り出し、女は物に換えた。耶万のため、身も心も差し出すのは、当たり前。喜んで死ね、喜んで堕ちろ。
赤い花の薬は、珍しい。珍しいから、手に入らない。手に入れるには、貢物が要る。足りない。もっと、もっと。
・・・・・・消す。そのために。
「巫を呼べ。覡も呼べ。」
祝。見えないモノを操り、大いなる力で、幸せに導く。
先を見る、先を読む。水や火、風や土など、思い通りに動かす。心を読み、流れを変える。闇を照らし、光を手にする。
手始めに一人。祝を攫って、耶万に連れ帰る。縛り、囲い、閉じ込め、虐げ、子を産ませる。
もし奪い返されても、耶万で生まれた子は、耶万のモノ。祝の力を持つ子が、一人でも残れば良い。
「お呼びでしょうか。」
「巫よ。何が妨げるのか、神の御告げを。」
「はい。」
叫び、踊り狂い、叫ぶ。倒れ、起き上がり、告げた。
「耶万の夢を撒き、兵を強めよ。遥か北、霧雲山を目指せ。」
バタッ。ピク、ピクピク。
攻め落とした村や国から、強い力を持つ巫、覡を集めた。
コレもハズレ。ドレも、同じコトしか言わない。しくじり続けているのだ、ソレで。
御告げ通りに動いても、北の地は手に入らない。御告げ通りに攻めても、誰一人、戻らない。
御告げ通りなら、耶万に幸せを齎すハズ。御告げが誤りなのか、違っているのか!
「覡は、まだか。」
「アァァァァァァァ! 去れ、去れ、去れぇぇ。」
バタッ。
コレは新しい。で、御告げは。なぜ動かん、なぜ黙る。何か言え!
臣の一人が駆け寄り、確かめる。スッと顔を上げ、近づき平伏す。
「この男、事切れて居ります。」
「なぜ死んだ。」
「・・・・・・私には、分かり兼ねます。」
大臣が手のひらを横に、スッと動かした。控えの臣が、刃を振るう。ビシャッと、辺りを染めた。




