7-1 忍び会議
新章スタート!
中の東国、南の地。大貝山の統べる地にある、覇権主義国家『耶万』。問答無用で戦を仕掛け、多くの国を滅ぼし続ける。そんな国に、知られてしまった。北の山奥に、豊かな地があると。
祝が見るのは悲劇、惨劇。祝の力を持つ者が、モノとして扱われて死ぬ。口に出来ないような事が起きる。何としても止めなければ!
耶万編、はじまります。
耶万に深く潜り、探る影。残り四つの忍びが、それを支えている。
バラバラに散り、集めに集めたアレやコレ。月に一度、天霧山。矢弦社に、五つの忍びが集う。南の地で見聞きした事を、話し合うために。
いつ、どこで、誰に聞かれるか分からない。だから南の地では、議れない。
霧雲山の統べる地にいる忍びは、他にも。五つの忍びは、忍びの結びで繋がっている。決して裏切らない。
霧雲山の木菟、鷲の目。二つの忍びも、忍びの結びで繋がっている。
他の忍びと付き合う事もあるが、結ぶ事は無い。忍びの結びとは、そういうモノ。
「耶万の大王。幾ら殺いでも、変わらぬ。」
桧は幾度も、大王を手に掛けている。
「確かに。誰が大王になっても、同じさ。」
梟が言い切った。
「耶万の者は皆、愚かなのだ。」
月も呆れ顔で、言い切る。
「ヤツらは、ココがオカシイ。」
顳顬を叩きながら、影が言った。
「祝の力が奪える、なんて思い込むぐらいだ。」
戯けながら、雲が言う。
呆れて、モノも言えない。
確かに、霧雲山の統べる地は豊かだ。水が多い、日も良く照る。地の質が良く、肥えている。田も畑も、山も川もキラキラ輝き、とても暮らしやすい。
だから欲しいってなら、解る。
違うんだ。ヤツらが欲しいのは、祝の力。祝の力があれば、南の地を豊かに出来る。そう信じて、疑わない。
「殺ぐとして、風見と早稲。」
雲が言うと、月と梟が溜息を吐いた。
耶万と風見は大国。早稲は村だが、国と同じくらい。
戦慣れしていて、強か。後ろに控えて、牙を剥く。弱ったら迷わず、グサリ。シゲたちが出て、弱くなった。とはいえ、侮れない。
風見は早稲と組んだ。戦好きで、人を人として扱わない。アチコチ攻めて、奪い捲る。
蔦山と戦うためだけに、村を三つ滅ぼした。火炎神が荒ぶられ、地が震えた。
「梟の術を使って、分かった。耶万は、思い込みが激しい。」
子から年寄りまで、猪のように突っ走る。違うかも知れない、なんて考えない。唯唯、呆れるばかり。
誰が長になっても、同じなのだ。奪って奪って、奪い捲る。
村から国へ、国から大国へ。
『数多の大国を統べ、大いなる王となり、やまとを治める。それが耶万の民である』と、恥ずかしげもなく、言い切った。
ブッ飛んでるよ。
言の葉が出るようになった子から、孫を抱く大人まで。口を揃えて言うんだ、同じ言を。『耶万の民は、王になる』ってさ。
「良村に預けた耶万も、言ってたなぁ。」
「あぁ、叫んでた。」
雲と影。溜息交じりに、呟いた。
「耶万の毒に溺れて、言ったんじゃナイ。心の底から、そう思っている。」
月が言うと皆、ゲッソリした。
王とは、民を守る者。力では無く、心で治める。戦をせず、誰も死なせず。他と付き合い、助け合う。それが王。
捻じ伏せる力があっても、ギリギリまで使わない。
化け王を見習え。王の何たるかを知れ、学べ!




