6-189 オレたちの手で
疲れたのだろう。夕餉を食べて直ぐ、コクリコクリと舟を漕ぎ出した。良村の良い子たち、スヤスヤ夢の中。ワンコも、スヤァ。
「で、シゲ。どうだった。」
カズが切り出す。
「北山から救い出された男は、子を含めて、死を望んだ。」
「・・・・・・そうか。」
何も言わなくても分かる。北山のは、耶万の毒を使ったんだろう。強いられて、考えられなくなって、罪を。
気の毒に。
死を望んだ、という事は、頭が戻ったんだ。戻って、犯した罪の重さに耐えきれず、死んだ。中には子も。
「耶万の、預かったんだってな。」
ポツリと、ノリ。
「あぁ、二人。他のは死んでた。」
溜息まじりに、コタ。
捕らえた耶万は二人とも、乱雲山へ運ばれる。グルグル巻きにされ、舟に転がされたまま。
北山、川北、玉置。武田、東山、飯田に三鶴。長がコロコロ変わっている。次から次に裁かれ、釜戸の火口へ飛び込む。罰を受けて。
それなのに、繰り返す。
三鶴の国は、三鶴から長を出すのを止めた。稲田、大田、草谷。木下、中井。五つの村の長が集まり、話し合った。
三鶴は国のまま、六つの村が一つになって、助け合う。そう決めた。
三鶴の長は、大田の長が務める。稲田と草谷の長は、大田の長を支える。木下と中井の長は引き続き、村を纏めて、整える。
バラバラだった三鶴の村は、宝玉社が纏め、悪しき考えを持つ者を見張る。同じ過ちを、繰り返さないように。
「それにしても。」
「耶万。」
「風見。」
「早稲。」
「・・・・・・ハァ。」
シゲ、カズ、ノリ、コタ。思わず溜息。
「緋から聞いた。耶万の大王、霧雲山を攻めるらしい。聞いた時ビックリしすぎて、声が出なかった。」
遠くを見つめて、ムロ。
「オレも聞いたよ、謡から。暫く動けなかった。」
少し俯いて、セン。
「影も同じ事、言ってた。」
シンが呟く。
緋、謡、影。隠れ里の忍びが、揃って。
潜っていた影は、釜戸の裁きが終わって直ぐ、雲と見合って消えた。桧、月、梟を集めて、話し合うのだろう。
五つの忍び、二つの忍び。一つになって動かなければ、守れない。
南の地から攻めてくる敵に、はじめに立ち向かうのは良村と、獣谷の隠れ里。早稲を知り尽くし、戦い慣れているが・・・・・・。
「皆、案ずるな。マルのために、我が良山を守る。獣谷の隠れ里は、化け王が繋いだ闇と、獣たちが守る。」
「オロチ様。戦に備えていますが、守れますか。オレたちの手で。」
「守れる。この山は強い。いざと言う時は、隠の世へ逃げれば良い。話は通してある。」
山裾の地で起きた戦より、酷い事になるだろう。耶万も風見も大国。早稲は後ろに控えて、牙をむく。
人だけでは足りない。隠や妖怪とも力を合わせて、守らなければ!




