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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
355/1634

6-189 オレたちの手で


疲れたのだろう。夕餉を食べてぐ、コクリコクリと舟を漕ぎ出した。良村よいむらの良い子たち、スヤスヤ夢の中。ワンコも、スヤァ。




「で、シゲ。どうだった。」


カズが切り出す。


「北山から救い出された男は、子を含めて、死を望んだ。」


「・・・・・・そうか。」



何も言わなくても分かる。北山のは、耶万やまの毒を使ったんだろう。強いられて、考えられなくなって、罪を。


気の毒に。


死を望んだ、という事は、頭が戻ったんだ。戻って、犯した罪の重さに耐えきれず、死んだ。中には子も。




「耶万の、預かったんだってな。」


ポツリと、ノリ。


「あぁ、二人。他のは死んでた。」


溜息まじりに、コタ。



捕らえた耶万は二人とも、乱雲山へ運ばれる。グルグル巻きにされ、舟に転がされたまま。


北山、川北、玉置。武田、東山、飯田に三鶴。おさがコロコロ変わっている。次から次に裁かれ、釜戸の火口ひのくちへ飛び込む。罰を受けて。


それなのに、繰り返す。




三鶴の国は、三鶴から長を出すのをめた。稲田、大田、草谷。木下、中井。五つの村の長が集まり、話し合った。


三鶴は国のまま、六つの村が一つになって、助け合う。そう決めた。



三鶴の長は、大田の長が務める。稲田と草谷の長は、大田の長を支える。木下と中井の長は引き続き、村を纏めて、整える。


バラバラだった三鶴の村は、宝玉社たかたまのやしろが纏め、しき考えを持つ者を見張る。同じ過ちを、繰り返さないように。






「それにしても。」


「耶万。」


風見かぜみ。」


早稲わさ。」


「・・・・・・ハァ。」


シゲ、カズ、ノリ、コタ。思わず溜息。




あかから聞いた。耶万の大王おおきみ、霧雲山を攻めるらしい。聞いた時ビックリしすぎて、声が出なかった。」


遠くを見つめて、ムロ。


「オレも聞いたよ、うたから。しばらく動けなかった。」


少し俯いて、セン。


「影も同じ事、言ってた。」


シンが呟く。



緋、謡、影。隠れ里の忍びが、揃って。


潜っていた影は、釜戸の裁きが終わって直ぐ、雲と見合って消えた。ひの、月、梟を集めて、話し合うのだろう。


五つの忍び、二つの忍び。一つになって動かなければ、守れない。



南の地から攻めてくる敵に、はじめに立ち向かうのは良村と、獣谷の隠れ里。早稲を知り尽くし、戦い慣れているが・・・・・・。






「皆、案ずるな。マルのために、我が良山よいやまを守る。獣谷の隠れ里は、化け王が繋いだ闇と、獣たちが守る。」


「オロチ様。いくさに備えていますが、守れますか。オレたちの手で。」


「守れる。この山は強い。いざと言う時は、おにときへ逃げれば良い。話は通してある。」



山裾の地で起きた戦より、酷い事になるだろう。耶万も風見も大国おおくに。早稲は後ろに控えて、牙をむく。


人だけでは足りない。隠や妖怪とも力を合わせて、守らなければ!


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