6-188 ただいま
目をキラキラ輝かせ、楽しそうなマル。抱っこされ、幸せそうなマルコ。ドキドキしながら、尾を振るコナツ。
舟は鮎川から森川に入り、良村の舟寄せへ。
「さぁ、着いた。」
舟を寄せ、縄をかける。マルコとコナツを舟から降ろすと、マルがゆっくり、舟から降りた。それからクルッと振り返り、ノリから荷を受け取る。
犬の背負子を、慣れた手つきでマルコに。コナツはキョトンとしながら、ジッと見ている。
「マル、手伝うよ。後ろを向いて。」
傷は癒え、痣も消えた。腕も上がるようになったが、捩じるとビッと、痛みが走る。
骨は折れていない。筋を痛めたまま、ほったらかしていたのだろう。匙も上手く、使えるようになったが・・・・・・。
釜戸山の出で湯に浸かって、楽になったと言っていた。良山にも出で湯があれば、早く治るだろうに。腫れる事は無いが引かない時は、葉を焙って当てている。
「あいがぁとお。」
ニコッ。
「ワン、ワワン。」 ノリサン、タダイマ。
舳に前足を乗せ、目を輝かせている。
「あ、シゲさん。ノリコ。」
マルが手を、マルコが尾を振る。コナツは、お座り。
シゲとノリは舟を引っ繰り返し、頭の上に乗せて運ぶ。二人の間にマル、隣にマルコ。後ろにコナツ。フンフンと楽し気に、山を登る。
初めて良山に来た時はフラついていたが、今ではシッカリ歩いている。仔犬たちが登れない時は、ノリコが咥えて、ヒョイ。これは変わらない。
「戻ったぞ、マル。マルコ。」
「おりょち、おかえい。」
「キャ、キャン。」 オカエリ、オロチ。
「蛇神様。」
「チュウ、ありがとう。」
大蛇は釜戸山に残り、アレやコレを片付けた。マルと共に戻りたかったが、どうにもならなくて。
良村の舟を使い蛇に守らせ、念のためチュウを乗せた。
「蛇神様、行って参ります。」
「気をつけてな。」
「ハイッ。」
務めを果たしたチュウは、ニッコリ笑って、石積みの社へ。隠の世を通り、牙滝社を目指す。アチコチ、寄り道をしながら。
モチロン、言い触らします。釜戸山、隠の世であった、アレやコレをネ。逃げ道も抜け道も、塞ぎますよ!
舟を小屋に置き、村へ。
「思い出すな。」
「あぁ。」
折れそうな程、細かった。痣だらけで、足を引きずって歩いていた。今でも細いが、しっかり歩けるようになった。ニコニコ笑っている。
「みんなっ、たらいま!」
腰と腕に瓢箪を付けたまま、マルが駆け出す。良村の皆に囲まれ、幸せそう。




