6-186 何があった?
ダァァァ。酷い目に遭ったぁ・・・・・・。
なぜ誰も、助けようとしない。見えないなら、まぁ。見えるなら、助けるだろう!
解らない、分かりたくも無い。気付いては、いる。霧雲山。祝辺への思いが、少しづつ離れている事に。
守る力を持っていて、守らなかった。止める力を持っていて、止めなかった。そう思われている。
守りたかった。だから守った、霧雲山を。止めたかった。だから止めた、隠の動きを。・・・・・・それが、誤りだと。
早稲、風見、耶万。遠く離れた南の、平たい地から次から次へ。
獣谷の隠れ里は、霧雲山に付いている。そう思い込んでいた。祝辺の守が認めた、隠れ里。同じ早稲から逃げてきた良村とも、繋がっている。だからコチラに。
甘かった。獣谷の隠れ里は、良村に付いた。どちらにも化け王が。ブランさまに見張らせ、見守って御出でだ。
良村には、隠神の愛し子がいる。
牙の滝の主さま、赤目の白蛇さま、蛇神様。幾万もの時を生き、強く輝き続ける。そんな隠が憑いた子に、九尾の黒狐が。今の牙滝神に、使わしめチュウまで。
あの隠鼠。あちこちの社へ使いを出し、広めている。いや、もう広がっている。鼠の力は侮れない。まず、数が多い。多すぎる。
釜戸山から牙滝社へ戻り、牙滝神の御許しを頂いてから、動く。そう思うよな? しかし違った。釜戸山から動きやがった。
守だぞ。霧雲山の、祝辺の守。平良の烏に乗っている、隠の守!
・・・・・・帰ろう、霧雲山へ。
「ただいま、戻り、ま、した。」
・・・・・・何が、あった?
虚ろな瞳、ダラリと垂れた腕。獣のような呻き声、流れ続ける涙。人の守も隠の守も、揃っている。私が溺れている間に、何が。
「良く戻った。平良、疲れただろう。ゆっくり、お休み。守はコチラへ。」
「は、い。」
不気味な笑みを浮かべる守に、嫌ぁな感じが。そして・・・・・・。
アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
「牙の滝の幼子、蛇神の愛し子マル。諦め、引きます。宜しいですね。」
・・・・・・。
「ハァァ。まだ足りませんか。」
「い、いや。そ、の。」
「あ、あ。そ、の。」
・・・・・・。アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
「牙の滝の幼子、蛇神の愛し子マル。諦め、引きます。宜しいですね。」
「は、い・・・・・・。」
「人の守よ、長になれ。隠の守を束ね、霧雲山の統べる地を、守り抜け。」
「は、い。」
蛇神様、黒狐さま。仰せ言に従い、人の守を、統べる地の長に。




