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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
351/1636

6-185 死の舞曲、再び


マルに憑いたのは、おにの蛇神。手を出せば漏れなく、隠が敵に回る。そうなれば・・・・・・終わりだ。


蛇神は恐ろしく強く、九尾ここのおの黒狐とも仲が良い。どちらも長い時を生き、衰えを感じない。もう千どころか、万も生き続けるだろう。




山守神やまもりのかみは統べる地を持つ、大神。」


「霧雲山の統べる地において、その力。弱まるばかり。」



牙の滝の主さま、赤目の白神、大いなる白蛇など。数多あまたの名を持つ隠神、大蛇おろち。気紛れに、人のときでマッタリ。気付けば国つ神として、祀られていた。


めぐし子を守るため使い蛇頭、ウタに牙滝社きばたきのやしろを任せた。なのに、力を保ったまま。むしろ日に日に、輝きを増している。


マル。他の愛し子とは、明らかに違う。


九尾の黒狐だけでは無い。牙滝神、使わしめチュウ。鴫山神しぎやまのかみ、使わしめマイ。揃い揃って、見守ると。隠、妖怪、社の司。忍びまで、良村よいむらに付いた。






「ならば、マルを祝辺の守として。」


「良く、良く、お考えください。」



蛇神は、水神。霧雲山の統べる地は、水が豊か。地の底に流れる水の筋を辿れば、どこへでも。加えて、隠神。隠の世を、好きに通れる。その気になれば、妖怪の墓場へも。


敵に回せば必ず、恐ろしい事になる。



神を降りたとはいえ、長い時を生きた隠。神の力を使いこなし、清め、守り、戦える。祝の力を持つ愛し子が望めば、再び神へ。


良村には、獣谷の隠れ里が。忍びたちが。


馬守、川田、岩割、蔦山。茅野、草谷、大平、陽守やもり。このたびの裁きが切っ掛けとなり、宝玉社たかたまのやしろ飯田社いいだのやしろ三鶴社みつるのやしろ。使わしめから、国つ神へ。社の司から、禰宜ねぎや祝へ。



「で、あれば。何が何でも、こちらへ。」


「霧雲山を、崩すつもりだと?」



水の多い山から水を抜けば、どうなる。水の多い山に水を集めれば、どうなる。霧雲山とて、土の塊。崩そうと思えば、崩せる。


力を失い続ける山と、力を蓄え続ける山。どちらが強い。


考えるまでも無い。霧雲山が崩れれば、天霧山が取って代わる。乱雲山、釜戸山が支え、助ける。



「しかし!」


隠のときに叩き落とされた守には、おのと同じ思いをさせる力が。使いたく無かったが、思い知らせるには、他に・・・・・・。




フフ、フフフッ。逃がさない。許さない。思い知れ。フフ、フフフッ。オギャア、オギャア。止めて。許して。助けて。


オギャア、オギャア。ごめんなさい、ゴメンナサイ。お母さん。帰りたい。死にたくないよ。痛いよぉ。ごめんなさい、ゴメンナサイ。もう、嫌だ。嫌なんだ。見たくない、聞きたくない。


きっと何か、罰を受けて死ぬんだ。そうでなきゃ、おかしい。こんなに苦しいのに。こんなに辛いのに。フフ、フフフッ。逃がさない。許さない。思い知れ。フフ、フフフッ。


フフ、フフフッ。フフフッ。フフ、フフフッ。オギャア、オギャア。ごめんなさい、ゴメンナサイ。嫌だ。嫌なんだ。フフ、フフフッ。


オギャア、オギャア。死にたくないよ。痛いよぉ。お母さぁん・・・・・・。



アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!



「スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします!」



目をひん剥き、耳を押さえながら叫ぶ。そんな守たちを見て、思う。私も『こう』だったのか、と。


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