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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
348/1635

6-182 このモフモフより、良いのか?


飯田は気に食わん。誰がおさになっても、乱れるだろう。しかし、飯田社いいだのやしろの者は皆、良い人だ。


神は争いを嫌い、長どもを見放された。慎ましく、豊かに生きる人たちを、お守りくださる。


狩り人たちは、長と関わろうとしない。避けている。イチを死なせてしまったと、気に病んでいる。月に一度ひとたび良村よいむらが作った墓に参り、同じ過ちを繰り返さないと誓う。



飯田社と茅野社かやののやしろは、対対たいたいの付き合いをしている。飯田の村と茅野の村も、対対になれば、強くなるのに。人の考えるコトは、解らん。


茅野は良村との付き合いがある。飯田も商いで、良村と。シゲとノリは、タエを見知っている。社から出ない限り、攫われるコトは無い。先読の力で分かるから、逃げるか隠れるかして、遣り過ごすだろう。


攫われても村から出られないように、おにと妖怪で守る。とんでもない何かが起きて困ったら、良村を頼る。馬守から釜戸社かまどのやしろへ、知らせてくれるだろう。



人に任せっぱなしにする気は無い。隠だって、そうだろう。人に見えやすい妖怪なら、化かせる。魑魅すだまの力も、借りよう。


にしてもマル、楽しそうだな。舟に乗るのが、好きなのか。タエも明るくなった。仔犬を抱いて、撫でている。


・・・・・・子狐より、仔犬、なのか? このモフモフより、良いのか?






「さぁ、着いた。」


シゲが舟から飛び降り、みよしを掴んで、グイッと上げた。


「ミィヨォ、タァマァ~。」


マルが大きく、タエは控え目に手を振っている。


「落ち着いたら、良村においで。」


シゲは長だが、狩り人。玉置の国とは、あまり。しかし、狩り人との付き合いは有る。


「マァルゥ、タァエェ。」


ミヨがブンブンと、手を振り返した。タマは黙って、手を振っている。しっかりと大きく。






玉置の舟寄せは、チョットした騒ぎに。引き取られた人たちが、舟から降りようとしない。トクが迎えに来た人に、何かを言っている。



北山社から救い出され、釜戸山へ。やっと助かった。玉置に戻れる。ホッとしたのに、震えが止まらなくなったのだ。


舟寄せで待っている、多くの男の姿を見て。




「ワン。」 マタネ。


ノリコが尾を振り、別れを告げる。


怖くないよ。あの人たち、良い人だよ。狩り人だね。禰宜ねぎもいる。


「ミヨ、タマ。行こう。」


使わしめケロ。人の姿に化け、ニコリ。


「・・・・・・はい。」




伯父さん、社の司だもん。こっちに、来られないよね。ここから社まで、少し歩く。ケロさまに付いて行けば、迷わない。


分かってる、解ってるの。でも・・・・・・。



「ミヨ、おいで。」


シゲに舟から降ろしてもらい、ニッコリ。


「あり、が、とう。」


スラスラ話せない。なのに、笑ってくれた。


「どういたしまして。」


シゲに頭を撫でられ、チョッピリ照れる。




「二人とも、待たせたね。」


「伯父さん!」


ミヨがトクに、ガバッと抱きついた。


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