6-182 このモフモフより、良いのか?
飯田は気に食わん。誰が長になっても、乱れるだろう。しかし、飯田社の者は皆、良い人だ。
神は争いを嫌い、長どもを見放された。慎ましく、豊かに生きる人たちを、お守りくださる。
狩り人たちは、長と関わろうとしない。避けている。イチを死なせてしまったと、気に病んでいる。月に一度。良村が作った墓に参り、同じ過ちを繰り返さないと誓う。
飯田社と茅野社は、対対の付き合いをしている。飯田の村と茅野の村も、対対になれば、強くなるのに。人の考えるコトは、解らん。
茅野は良村との付き合いがある。飯田も商いで、良村と。シゲとノリは、タエを見知っている。社から出ない限り、攫われるコトは無い。先読の力で分かるから、逃げるか隠れるかして、遣り過ごすだろう。
攫われても村から出られないように、隠と妖怪で守る。とんでもない何かが起きて困ったら、良村を頼る。馬守から釜戸社へ、知らせてくれるだろう。
人に任せっぱなしにする気は無い。隠だって、そうだろう。人に見えやすい妖怪なら、化かせる。魑魅の力も、借りよう。
にしてもマル、楽しそうだな。舟に乗るのが、好きなのか。タエも明るくなった。仔犬を抱いて、撫でている。
・・・・・・子狐より、仔犬、なのか? このモフモフより、良いのか?
「さぁ、着いた。」
シゲが舟から飛び降り、舳を掴んで、グイッと上げた。
「ミィヨォ、タァマァ~。」
マルが大きく、タエは控え目に手を振っている。
「落ち着いたら、良村においで。」
シゲは長だが、狩り人。玉置の国とは、あまり。しかし、狩り人との付き合いは有る。
「マァルゥ、タァエェ。」
ミヨがブンブンと、手を振り返した。タマは黙って、手を振っている。しっかりと大きく。
玉置の舟寄せは、チョットした騒ぎに。引き取られた人たちが、舟から降りようとしない。トクが迎えに来た人に、何かを言っている。
北山社から救い出され、釜戸山へ。やっと助かった。玉置に戻れる。ホッとしたのに、震えが止まらなくなったのだ。
舟寄せで待っている、多くの男の姿を見て。
「ワン。」 マタネ。
ノリコが尾を振り、別れを告げる。
怖くないよ。あの人たち、良い人だよ。狩り人だね。禰宜もいる。
「ミヨ、タマ。行こう。」
使わしめケロ。人の姿に化け、ニコリ。
「・・・・・・はい。」
伯父さん、社の司だもん。こっちに、来られないよね。ここから社まで、少し歩く。ケロさまに付いて行けば、迷わない。
分かってる、解ってるの。でも・・・・・・。
「ミヨ、おいで。」
シゲに舟から降ろしてもらい、ニッコリ。
「あり、が、とう。」
スラスラ話せない。なのに、笑ってくれた。
「どういたしまして。」
シゲに頭を撫でられ、チョッピリ照れる。
「二人とも、待たせたね。」
「伯父さん!」
ミヨがトクに、ガバッと抱きついた。




