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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
345/1634

6-179 傷口が広がる前に


山走りから戻り、で湯に浸かる。


釜戸山には、犬が浸かれる湯がある。マルコはマルに、ノリコはノリに、コナツはシゲに洗われ、カポーン。いい湯だな。



ブルルッとしてから、乾いた布でポンポン、フキフキ。湯上りに、水をゴクゴク。染み渡るぅ。


飼い主たちが出で湯に浸かっている間、ノンビリ。それから、美味しいゴハンをパクパク、モグモグ。ふぅ、幸せ。


朝餉を食べて、お片付け。整えてから、お別れの言の葉を交わす。





ノリが乗って来た舟は、大川の舟寄せまで運んである。



裁きが始まる前。受け入れ先が決まっている者は、大川から釜戸山に入った。


釣り人の村に泊まり、離れへ通った。後から決まった者は、守り人の村にいる。狩り人の村を通って、源の泉から出る。







スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします。ここから出して。アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! 許して。助けて。頼むから。もう。バタッ。


ベチベチッ。ハッ!


フフ、フフフッ。フフフッ。フフ、フフフッ。オギャア、オギャア。ごめんなさい、ゴメンナサイ。嫌だ。嫌なんだ。


スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします。ここから出して。お願いします。お願いします。お願いします。


フフ、フフフッ。オギャア、オギャア。死にたくないよ。痛いよぉ。お母さぁん・・・・・・。


アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!



まさに、地獄。







ベチベチッ、ベチベチッ。・・・・・・。


「投げ込むか、霧雲山へ。」


コッコ、サラッと言い放つ。


ベチベチッ、ベチベチッ。・・・・・・。


「祝辺か?」


大蛇おろち、ニコニコッ。


ベチベチッ、ベチベチッ。・・・・・・。


おにときが、宜しいのでは。」


チュウ、楽し気に申し上げる。




「スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします。ここから出して。 アァァァ!! スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。ここから出して。お願いします。お願いします。お願いしますぅぅぅ。」


ガタガタ、ブルブル。


「守よ。」


ブツブツ、ブツブツブツ。ブツブツ、ブツ。


「祝辺の、隠の守よ。」


アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!




『ほんの少し、遣り過ぎたかナ』と思う大蛇。『このまま捨て置けば、どうなるんだろうナ』と思うコッコ。『これで祝辺の守も、少しは静かになるナ』と思うチュウ。見合って、ニコォ。



霧雲山の統べる地で、最も強い力を持つ。と、考えられている祝辺の守。束だと煩わしいが、一隠ならコンなモノ。


・・・・・・変わらないか。


いくさを止められず、多くの人を苦しめ、死なせた。守がその気になれば、止められた。もっと早く動けば、多くの命が守られた。






「スイマセン。ごめんなさい。もう、しません。許してください。助けてください。お願いします!」


目をひん剥き、耳を押さえながら叫ぶ守。


「人の守をけしかけ、長にせよ。隠の守を束ね、霧雲山の統べる地を守り抜け。」


大蛇に言われ、おののく。蛇神、九尾ここのおの黒い狐、あちこち伝え回る隠の鼠。揃って、ニタァと笑っている。



「人の守を、統べる地の長に。」


平伏し、誓う。何としてもえなければ!


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