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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
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6-177 闇に惑う


来ないで、来ないで、来ないで!


先読の力。母さんから引き継いだ。母さんは婆さまから。婆さまは、婆さまの母さんから。娘にだけ、その中の一人にだけ、引き継がれる。


継ぐ子を産めば、力を失う。産んだ子が引き継ぐから。


何が起きて、どうなるか。何を選べば変わるのか。選んで、戻って、また選ぶ。




「逃げなさい。」


どこへ? 父さん、行かないで。


「生きなさい。」


どうして? 母さん、姉さん、行かないで。


「逃げるんだ。」


どうやって? 兄さん、行かないで。



何が正しくて、何が違うの。生き残る道を選んで、選んで。それでも生きられないと、生き残れないと知った。


・・・・・・私は、殺されるために生まれた。なぜ。なぜ私は。こんな力、要らない。先読なんて、したくない。



力を失えば、放ってくれる? 力が消えれば、追われない?


違うよね。放たれたければ、継ぐ子を産むしか無い。母さんは私を産んだ。婆さまは、母さんを産んだ。その前も、その前も同じ。でも、みんな死んだ。殺された。




「生きて。」


一人は、イヤ。


「幸せに。」


お願い、一人にしないで。



なぜ殺されなきゃ、いけないの。なぜ死ななきゃ、いけないの。なぜ、なぜ、なぜ!


先読の力が欲しいなら、あげる。だから許して。だから逃がして。お願い、お願いよ。



嫌なの、怖いの。恐ろしくて、耐えられないの。助けると思って、私。あれ、何だっけ。ここ、どこ?



母さん、父さん。兄さん、姉さん。・・・・・・みんな、どうしたの。そんな目で見ないで。どうして血だらけなの。



どうして、動けない。苦しい。足が重い。イヤ、手を離して。掴まないで、痛い。放して、放してよ。力なんて要らない、先読したくない。






「コレは使えない。」


分からない。使えないって、何に使う気だったの。


「闇に魅せられている。」


分からない。闇って何よ、魅せられてるって?


「力を示せ。」


いくら繰り返しても同じ。だから言わない、示さない。



先読なんて要らない。祝の力だから、守る? 祝の力なら、社が守ってくれるよね。なのに、なぜ。




「ニゲラレナイ、ココデシヌ。」


なぜ殴るの。教えてあげたのに。


「ニゲラレナイ、サバカレル。」


なぜ笑うの。北山社きたやまのやしろには、無いのよ。



社には、神の御坐おわす地には。おにときは、妖怪の墓場に繋がっている。なのに無い。北山社は、どちらにも。・・・・・・闇の向こうに、行けない。


助けて。誰か助けて。動けないの、足が石のようで。



私を逃げすために、みんな死んじゃった。そうまでして逃がしてくれたのに、捕まっちゃった。


私は悪い子です。死んでも、みんなの所へは行けない。一人きり、一人ぼっち。


・・・・・・疲れ、ました。






「闇は照らされ、光り輝く。」


ヤノが額に触れる。スッと、タエの寝顔が穏やかになった。


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