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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
340/1634

6-174 釜戸山、といえば


北山社きたやまのやしろへの裁きが、全て終わった。しまいの裁きは、昼に終わる筈だった。休みを挟んで裁きは続き、終わったのはゆうの前。


日吉は帰れる。他は泊まって、朝まで待たなければ。月や星の光を頼りに進むのは、いくら慣れていても危ない。



おにや妖怪は、飛んで帰れる。真っ暗闇でも、嵐が来ても一っ飛び。しかし揃って、お泊り。釜戸山まで来て、で湯を楽しまずに帰る? ナイナイ。


ゆっくり、ゆったり湯に浸かり、疲れを癒す。出で湯団子を持ち帰れば、みんなニッコリ。


『なぜぐ、戻らない』なんて、誰も言いません。釜戸山といえば、出で湯です。






「ミヨ、戻ったよ。」


スゥ、ピィ。スヤスヤ。


「おや、待ちくたびれたか。・・・・・・サヤに、良く似ている。」



継ぐ子の一人として、祝に仕えていた頃。社から家に帰ると、サヤが笑って出迎えてくれた。『トク兄さん、おかえり』と。


まれに遊び疲れて、眠っていたな。


ミヨが育って、好いた誰かと契るまで。叶うなら、親になるまで。少しでも長く生きて、見守りたい。サヤに代わって、出来る限りの事を。慈しんで育て、幸せに。



「うぅん、あれぇ?」


目が覚めて、小さく伸びた。目をこすりながら思い出す。ここは釜戸山。裁きが終わるまで、待ってたんだ。


仔犬、コナツと遊んで。マルやタエとも遊んで。お腹いっぱい食べて、眠くなって、それで。



「ただいま、ミヨ。」


・・・・・・えっと、トク伯父さん?






「ただいま、マル。」


「おかえい、シゲさん。」


「終わったか。」


「あぁ、終わった。」


シゲとノリが話している間、マルはマルコを撫でる。ノリコはノリに、コナツはシゲに撫でられ、ウットリ。



「お、じ、さん。」


マルを見習って、話しかける。


「何だい?」


「お、かえ、り。トク、お、じ、さん。」


ハッとして、泣き笑いの顔になる。


「ただいま、ミヨ。」


トクがミヨを、優しく抱きしめた。




宝玉神たかたまのかみの使わしめ、ケロ。少し離れた所で、もらい泣き。『良かった、良かったなぁ』と言いながら。


出で湯? 浸かりますヨ、チョットだけ。蛙ですから。烏の行水ぎょうずいより、早いかも。何たって直ぐ、だるので。






「蛇神様、黒狐さま。隠のときに、祝辺の守が居るようです。」


牙滝神きばたきのかみの使わしめ、チュウ。闇を切り裂く他に、闇を探る力も持つ。


「暫くの間、懲らしめようとな。」


大蛇おろちの目が、泳いでます。コッコは、尾をワサワサ。



そういうコトですか。ハイ、分かりました。隠の守がめぐし子に何か、したのでしょう。愚かと言うか、命知らずと言うか。


まぁ、そういうコトです。蛇神様も黒狐さまも、楽しそうで何よりデス。



そうでした。大蛇様、でしたね。黒狐さまは、コッコさま。・・・・・・ニワ、コホン。いえ、何でも。


せっかく釜戸山まで来たのです。出で湯を楽しみましょう。フン、フフン。




因みに、チュウ。とってもキレイ好きな、隠の鼠です!


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