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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
339/1634

6-173 過不及無し


「終わったか。」


「終わった。」


コッコに問われ、大蛇おろちが答える。



心消こけしの祝が、先読の力で見た。変えようと思えば、変えられる。変えなければ、マルが傷つく。許さん!


先乗りしていたおにの守を、平良ひらの烏から剥がし、隠のときへ放り込んだ。


他のは脅して、帰るように仕向けた。一人足りないと気付くまで、かかるだろう。


隠の守よ、早く気付け。長引けば長引くほど、闇に飲まれるぞ。戻るまで、かかるぞぉ。クククッ。





「大蛇よ。めぐし子と、娘二人。どうする。」


「ん?」



マル、タエ、ミヨ。三人の娘たち。皆、強い力を生まれ持つ。


霧雲山。祝辺に取られれば、生けにえにされて死ぬか、扱き使われて死ぬか。どちらにせよ、幸せになれない。


霧雲山を守る力が、少しづつ弱まっている。このままではいづれ。


祝辺の守は慌て、焦り、見誤る。その時、どう動く。アレは霧雲山を守るためなら、何だってする。めぐし子でも、いや愛し子を使って、治めようとするだろう。




「許さん! 残らず根の国へ叩き込む。その前に、隠の世で闇に。フフ、フフフフフ。」


「・・・・・・、友よ。」



この地は、水が豊かだ。中でも霧雲山は、水を湛えたかめのよう。甕が割れれば、どうなる。


近くの山が防いで、大きな大きな湖に。それも良いがな。


霧雲山が崩れても、統べる地には多くの祝がいる。社には神と使わしめ。天霧山、乱雲山が支えるだろう。初めは少し困るが、どうにでも。


良山よいやまで祝の力を持つのは、マル一人。良村よいむらの人は皆、強い。戦い、守れる。マルも村を守るため、出来る事をしようと。




「となれば?」


「尽くそうと・・・・・・する。」


コッコの問いに答え、大蛇は悩む。



マルは優しい娘だ。苦しくても辛くても、力を使い続けるだろう。日に日に痩せこけ、倒れてしまう。良村の皆が止めても、『出来る限りの事を』とか言って。


守め! 祝辺から出て、力を尽くせ。霧雲山を守りたければ、人の心を集めろ。崇められているからと、手を抜くな。


死ねば、隠になるダケ。死んでも守は守。命などガリガリ削って、隠になれ!


なぁにが、祝辺の守だ。霧雲山しか、守れなかったではないか。統べる地を守ったのは、隠と妖怪だ。化け王の才に頼って、何とか持ち堪えただけ。ハッ。



・・・・・・とはいえ、このままでは。隠の世か、妖怪の墓場で。いや。良村で暮らす方が、幸せだろう。


人の子は、人の世で生きる。それが良い。愛し子の幸せを守るために、出来る事。




「・・・・・・気に食わんが、解った。」


シブシブ、イヤイヤ。


「もう少し、待つか?」


コッコも、大蛇と同じ気持ちでした。


「そうだな。」


大蛇の顔がパァッと、明るく。


「そうしよう。」


コッコも、ニッコニコ。




その頃、隠の世では・・・・・・。


隠の守が闇に絡み付かれ、目を剥いて呻っていました。あぁ~ら、らっ。


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