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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
334/1634

6-168 妻子の敵


タエの苦しみは武田から、鴫山社しぎやまのやしろから始まっている。


めかんなぎおかんなぎも、祝を守ろうとしなかった。先読の力を持つ祝を、おのが欲を満たすためだけに、モノとして売り飛ばしたのだ。


娘、母、祖母。三代みよに渡って、同じ苦しみを・・・・・・。



「仕置を言い渡す。鴫山社の巫、ミバァ。覡、ミジィ。仕置場にて、鞭たたき。痣だらけにしてから縛り、二日の間、吊るす。三日め、火口ひのくちへ飛び込め。」


エイの下した判決に、揃って不服そうな顔をした。見えない二人は社の司、クアに助けを。しかし、悟る。


見えないハズなのに、見えたのだ。鴫山神の使わしめ、マイの姿が。蜷局とぐろの中で歪む、クアの顔もバッチリ。



「御怒りだ。『釜戸の祝が甘ければ、絞め殺せ』との、おおせである。」


マイはニタッと笑って、言い放った。呻るクアに睨まれ、ミバァもミジィも真っ青。


「仕置場へ。」







飯田の国、飯田社いいだのやしろ。祝が居るにもかかわらず、覡も。


巫は、祝をかばって死んだ。それから誰も、巫になろうとしない。祝の力を持つのは皆、男。祝が殺された時、力を失った。だから飯田社には、祝女が一人もイナイ。


飯田の長と覡、ナオ。次から次へ攫い、売り飛ばしていた。東山のや武田のと同じ、クズである。


他から奪っただけでは無い。飯田の祝を殺し、祝の子を攫った。そして、死なせた。



「仕置を言い渡す。飯田社の覡、ナオ。仕置場にて、鞭たたき。痣だらけにしてから縛り、二日の間、吊るす。三日め、火口へ飛び込め。」


「嫌だ!っ、何を。や、止めろぉぉ。」


燃えるような目をしてカタが、ナオの腕を思いっきり、じ上げた。



「覡よ、この顔。見覚え、あるな。」


「社の司だろ! イダッ、イダァァッ。」


放せ、オレは悪くない。



飯田の社の司、カタ。妻と娘を飯田の長と、覡に奪われている。妻を守ろうとして、切りつけられた。命は繋いだが・・・・・・。


泣いて叫んで、ボロボロに。どん底まで落ちて、心の声が聞こえるように。



妻は娘を守ろうとして、ナオに刺し殺された。娘は攫われ、北山に売り飛ばされる。まだ子なのに穢され、孕まされた。


幼い体では、お産に耐えられない。それでも産まされ、長引く。大の男、三人がかりで押さえつけられ、胎から引き出された子は、死んでいた。


お産でボロボロだった娘は、息絶えた。むくろは刻まれ、山に。・・・・・・獣に食われ、骨はアチコチ、散らばった。




全てを知ったカタは、泣き叫びながら探し回った。飯田神いいだのかみの使わしめ、ヒオも手伝った。それでも見つからず、裁きを見届けようと、釜戸社かまどのやしろへ。



ヒオは、牙滝神の使わしめチュウに、言伝を頼む。『遅れるが必ず出るから、飯田の裁きをのちに』と。


急ぎ社に戻り、牙滝神きばたきのかみの御許しを得たチュウ。飯田神に御願い申し上げる。どうか、どうかと。そして使い蛇に乗り、釜戸社へ。


そういう訳で、ヒオとカタが遅れて来た。




「オマエが殺した女は、オレの妻だ。オマエが攫った子は、オレの娘だ。二人とも死んだ。なのに何だ。放せ? オレは悪くないだぁ?」


「ヒイッ。オレは、そんなコトは。」


「オレには聞こえるんだ、心の声が!」


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