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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
333/1636

6-167 私腹を肥やした結果


調べによると、祝や祝の子らは皆、やしろや離れから攫われたと判った。


武田、東山、飯田、川北、北山。そのおさおかんなぎが、狩り人などから聞いた話を元に、祝の力を持つ者を。


鴫山社しぎやまのやしろの祝女、マルを攫ったのは東山の長と、覡だった。




東山社ひがしやまのやしろには、祝が居ない。


ずっと昔、村の人が数多あまたで。穢された祝は、おのが命を断った。神は荒ぶられ、山だけを守られるように。


それからだ。東山に祝が、生まれなくなったのは。




祝を求めるなら、神に御許し願い奉るのみ。にもかかわらず、他から攫うなど、決して許されない。


長はいくさを仕掛けた罪で、死んだ。終わらせれば良いものを、覡。日追ひおいが全て、引き継いだ。全てだ。



攫った女を追い詰め穢し、子を産ませ、産ませ、産ませ、死なせた。攫った男を追い詰め壊し、闇に堕とし沈め、孕ませ、孕ませ、孕ませ、狂い死なせた。


死なずに残った者を売り飛ばし、他の者を攫った。そうして多くの命と魂を弄び、東山は何を得た。






鴫山の祝女マルが、命を引き換えに産み落とした嬰児みどりごには、祝の力が無かった。役立たずと罵り、むくろを山奥に捨てた。嬰児は攫った他の者に押し付け、そのまま。


幼子おさなごが川北に攫われたのに、気付かなかった。なぜだ。祝の力を受け継がず生まれた子など、どうとでも。か?


北山に攫われた子が娘まで育ち、北山に攫われた。にも拘わらず、気付かなかった。なぜだ。祝の力を持たぬ娘など、どうとでも。か?



「仕置を言い渡す。東山社の覡、日追。仕置場にて、鞭たたき。痣だらけにしてから縛り、二日の間、吊るす。三日め、火口ひのくちへ飛び込め。」




「フッ、何を言い出すかと思えば。東山神ひがしやまのかみが、荒ぶられるぞ。それでもっ、・・・・・・ぐっ、るじぃ。」


暴言を吐こうとしたら、イキナリ何かに押さえつけられ、息が出来なくなった。


「黙れ、日追。東山神は大層たいそう、御怒りだ。釜戸の祝が甘ければ、覡を焼き殺せとのおおせである。」


アズはポンと狐火を出し、見せつけながら言い放った。


「まざがぁ。」


「受け入れよ。」


「ぞんなアァァァァァァァ。」


狐火で顔を焼かれ、叫び、呻りながら小さくなった。




「アズさま。日追を、仕置場へ運んでも?」


「あぁ、そうだな。頼む。」


控えていた祝人の足元に、ポイッ。そして、ニッコリ。



胸に手を当てずとも、身に覚えが有る者ら。揃ってガタガタ、ブルブル。さて、お次は?







鴫山社には、祝が。祝女に祝人、継ぐ子にも困らない。なのにナゼか、めかんなぎと覡が一人づつ。


ハイ、そうです。武田の長と共に謀り、祝や祝の子を攫って売り飛ばし、おおやけ事寄ことよせて、己のためになるよう、動いていました。


命を落とした者の中には、タエの身内も。



タエの祖母は飯野から、武田に攫われた。守ろうとした父母も、殺されている。武田から東山に売られ、逃げおおし、茅野で娘を奪われた。守ろうとして、夫と共に殺された。


タエの母は茅野から、飯田に攫われた。守ろうとした父母も、殺されている。飯田から川北に売られ、逃げ果し、添野で娘を奪われた。守ろうとして、夫と共に殺された。


タエは添野から豊田に売られ、豊野に逃げたが豊田に見つかり、北山に売られた。ゆかりの者は皆、殺された。


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