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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
330/1634

6-164 後悔先に立たず


祝辺の守は、山守神やまもりのかみを支える柱に過ぎない。霧雲山の統べる地を守るために、霧雲山を守る事で、力を尽くす影である。


死してなお、強い力を保ち持つのは、おにだから。


中には崇め祀られる事で、神となる隠も。しかし、祝辺の守は違う。崇められてはいるが、祀られてはいない。


人の守は、人に寄り添う。隠の守は、力をふるい、山を守る。霧雲山さえ守れれば、それで。



隠の守が中つ国に留まるのは、人の守に出来ない事を。生けにえになり、闇に飲まれた人の魂を鎮める。そのためだけに、隠として生かされているのだ。


・・・・・・忘れていた。





釜戸神かまどのかみ。我のめぐし子を、奪うか。」


「まさか!」


「我とて同じ。神の愛し子を奪うなど、有り得ぬ。」


釜戸神、大蛇神おろちのかみ二柱ふたはしらの怒りが、ビシビシ伝わる。



良山よいやまにも、石積みのやしろがあります。マルが望めば、学ばせましょう。オロチ様、それで宜しいでしょうか。」


「フム、許す。」


「学ぶなら、こちらで。」


エイが明るい声で、にこやかに言った。


「なっ!」


隠の守、大慌て。



保護者と隠神が、渡さないと宣言。釜戸社かまどのやしろの祝が、それを認めた。守の出る幕では無い。


それにエイは、釜戸神の愛し子。マルは、大蛇神の愛し子。二人も愛し子を傷つける、なんてコトになれば・・・・・・。





カチン、ジュル、シャッ。



ほんの少し、考え込んだだけ。なのに気付けば、使わしめに囲まれていた。


蛙と蛇は、舌ベロン。犬と狐は、ジュルリ。すっぽんは、お口をカチカチ。猫は爪を出し、ニヤァ。鷹、鷲、梟の猛禽三兄弟? くちばしピッカァァ。他にもイロイロ。


平良ひらの烏から抜け出し、地に潜れば逃げられる。しかし、それでは平良を見捨てる事に。


飛んで逃げようにも、上には。縫うようにして突っ切り、外へ!




「クゥゥ、ウワン。」 ニゲラレルト、オモウナヨ。


社の外を守るのは、良村のノリコ。見える犬です。ちなみに、助犬つき。



「クッ。」


くなる上は、行くしか!



タッ、ガブッ。


力任せに噛みつき、降り立つ。ぐにトコトコ、シゲの前で一度ひとたびクイッ。それから、釜戸神と大蛇神の御元へ。


ピクピク虫の息だが、生きている。平良の烏をポタッと置き、外に出た。



釣り人の犬だが、早稲わさの生き残り。狩り人の犬には劣るが、狩りだって出来る。飛んでくる獲物を咥えるコツは、マルコから教わり、覚えた。


木の枝ポーンは、楽しみながらイロイロ鍛えられる、良い遊びなのだ。





「隠の守よ。認め受け入れれば、死なせずに済んだものを。」


「なぜ逃げた。」



・・・・・・これは、いけない。使わしめに、社の司。狩頭に、長もいる。



地が震えて、いくさが始まった。風見かぜみが潜んで、退けた。化け王の才で、助かった。しかし、変わった。


なぜ、もっと早く。救えたのなら、初めから。守れたのなら、救えたのなら、なぜ?


そうして少しづつ、離れた。なのに。


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