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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
329/1634

6-163 すっこんでろ


マルは良村よいむらに引き取られた、良村の子。・・・・・・それでも、何とか。



「我はマルに祝の力が無くとも、憑いた。」


「そっ、のような。」


「それが、めぐし子。」



おにや妖怪が、人に憑く。珍しい事では無い。


蛇憑き、狗憑き、狐憑き。猫憑き、狸憑き、猿憑きなど、いろいろ。ある日、気に入った者にフイッと憑く。


憑いた者の子に、憑く事も。


持たぬ者は恐れるが、傍らで守っているだけ。悪さしたり、わざわいもたらす事は無い。むしろ、それらを遠ざけている。



祝の力だって、似たようなモノ。


ある日フッと、使えるようになる者。親から子へ、受け継がれる者。持つ者が死したのちゆかりの者が引き継ぐコトも。


数は少ないがエイのように、神の愛し子となる人。ツウのように、神からうつわさずけられる人も。


それらは皆、他の祝とは違う力を持ち、中つ国を支える柱となる。




「愛し子を、霧雲山へ。」


食らいついたら、どこまでも。それが、祝辺の守。すっぽんもビックリ。雷が鳴らなくても、離します。


陽守神やもりのかみの使わしめ、まろを御覧ください。ね、ポカンとしているでしょう?


他の使わしめ、社の司、雲まで、アングリ。




「ウゥゥゥ。」 ヨイムラノコダ。


ノリコが呻る。



人の事を決めるのは、釜戸山。マルはマルコと、良山よいやまで生きる。霧雲山は、すっこんでろ! 


ノリさんがオレを、シゲさんと社に行かせたのは、コイツを仕留めるためか?


外で待ってるように言われたから、中には入らない。出てきたら、噛みついてやる。






ここに集められのは、見えて聞こる人たち。


何が起こっているのか分からないのは、四人だけ。岩割のおさ、セキ。川田の狩頭、ゴロ。馬守の狩頭、イク。心消こけしの忍び、影。


良村の長、シゲが見聞き出来るのは、大蛇おろちだけ。それでも何となく、何が起こっているのか分かる。




「祝、宜しいでしょうか。」


「申せ。」



オロチ様の言の葉を聞く限り。霧雲山の祝辺の、隠の守が寄こせと。マルの力が欲しいと、繰り返し言い寄っている。違いますか?


マルは良村が引き取り、良村の子として、慈しんで育てています。


首に残っていた締め跡も、つけられたあざも全て、消えました。傷は癒え、痛みも引き、真っぐ歩けます。残った傷の跡は、どうにも。しかし薄く、目立たなくなるでしょう。


良く食べ、良く動き、良く眠る。他の子とも仲良く、コロコロと良く笑います。


仔犬を飼い、命の尊さも学んでいます。出なかった言の葉も、出るように。少しどもりますが、そのうちスラスラ話せるようになるでしょう。



マルは良村の子です。


良村の子は皆、親を亡くしています。だからオレたち、良村の大人が親に代わって、慈しみ育てています。


マルだけじゃ無い、みんな良村の子です。祝の力が有ろうが無かろうが、同じなんです。


大人になって、村を出たいと言えば、『いつでも帰っておいで』と、送り出します。それまでは決して、出しません。渡しません。手放しません!





「人の考えより、神の」


隠の守は、思い違いをしている。


「守よ。いつ、神になった。」


釜戸神の、御言宣みことのり


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