6-160 多勢に無勢
モグモグ、ゴックン。ごちそうさまでした。さぁて、ハリキッテ裁きましょう。
「祝、宜しいでしょうか。」
武田の国、鴫山の社の司が切り出した。
「申せ。」
「先程の二人の子、鴫山社で育てます。」
「ならぬ。その子は、祝辺で育てる。」
平良の烏に乗ったまま、隠の守が言い切った。イキナリ始まった争奪戦に、ザワザワ。
「静まれ。その子は良村に引き取られ、幸せに暮らして居る。武田も祝辺も、諦めよ。」
「縁の者が引き取る。それが子の幸せに。宝玉さんだって、そう思いますよね?」
鴫山社から攫われた、祝女の孫だ。祝辺だろうが何だろうが、渡して堪るか! コイツなら、こちらに従う筈だ。
「思わない。」
トクがバッサリ、切り捨てた。
釜戸山に入り、守り人の村で手続きを終え、姪のミヨに会った。言の葉は出るが、話が出来ない。それだけ深く、傷つけられたんだ。直ぐに連れ帰り、守りたい。
しかしまだ、裁きが終わっていない。今は、引き取られた子らと共に、離れにいる。
良村に引き取られた、マルさんにも会った。仔犬と楽しそうに、遊んでいた。
傍らに居たのは、良村の犬好きだろう。犬を二匹、連れていた。優しく見守っていた。幸せそうだった。
・・・・・・サヤが、守った子だ。
戦好きな武田になど、渡せない。玉置も酷いが、武田だって似たようなモノ。子の幸せを願うなら、良村で暮らした方が良い。
「鴫山さん、諦めなさい。『使える』とか『優しく接して、取り込もう』とか考える者は、信じられない。それに欲しいのは子じゃなく、祝の力でしょう?」
「なっ、んで。」
「社の司ですがね。元は、継ぐ子ですよ。」
宝玉の祝は、心の声まで聞こえるのか。
風を操れて、心が読める。欲しい。その前に良村、いや良山に入る前に、何としても奪わなければ。何だ、その目は。あっ、しまった。
「何が『しまった』ですか。」
・・・・・・。
「祝辺の守。人でも隠でも同じ、欲しいのは祝の力でしょう?」
・・・・・・。
「武田も祝辺も、良村を敵に回す気ですか。」
「止めときな。」
「忍びが動くぜ。」
雲と影、揃ってニヤリ。
「良村の子だ、良村で育てる。」
シゲが低い声で、言い切った。
「奪う気なら、許さない。」
川田のゴロ。
「子の幸せを壊す気か?」
馬守のイク。
「攫う気じゃ、ないよな。」
岩割のセキ。
忍び二人に、狩頭二人。長と社の司が、一人づつ。今だけでも良村には、六人。対してオレには、烏が一羽。岩割の長は、縄使い。直ぐに縛り上げるだろう。
それに、だ。狩り人三人に、忍び二人だぞ。どう前向きに考えても、勝てないだろう。・・・・・・クソッ。
「諦めなさい。良村の子は、良村で。」
釜戸の祝、エイも加わった。




