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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
326/1634

6-160 多勢に無勢


モグモグ、ゴックン。ごちそうさまでした。さぁて、ハリキッテ裁きましょう。




「祝、宜しいでしょうか。」


武田の国、鴫山の社の司が切り出した。


「申せ。」


「先程の二人の子、鴫山社しぎやまのやしろで育てます。」


「ならぬ。その子は、祝辺で育てる。」


平良ひらの烏に乗ったまま、おにの守が言い切った。イキナリ始まった争奪戦に、ザワザワ。




「静まれ。その子は良村よいむらに引き取られ、幸せに暮らして居る。武田も祝辺も、諦めよ。」


ゆかりの者が引き取る。それが子の幸せに。宝玉たかたまさんだって、そう思いますよね?」


鴫山社から攫われた、祝女の孫だ。祝辺だろうが何だろうが、渡して堪るか! コイツなら、こちらに従う筈だ。


「思わない。」


トクがバッサリ、切り捨てた。





釜戸山に入り、守り人の村で手続きを終え、姪のミヨに会った。言の葉は出るが、話が出来ない。それだけ深く、傷つけられたんだ。ぐに連れ帰り、守りたい。


しかしまだ、裁きが終わっていない。今は、引き取られた子らと共に、離れにいる。


良村に引き取られた、マルさんにも会った。仔犬と楽しそうに、遊んでいた。


傍らに居たのは、良村の犬好きだろう。犬を二匹、連れていた。優しく見守っていた。幸せそうだった。



・・・・・・サヤが、守った子だ。



戦好きな武田になど、渡せない。玉置も酷いが、武田だって似たようなモノ。子の幸せを願うなら、良村で暮らした方が良い。



「鴫山さん、諦めなさい。『使える』とか『優しく接して、取り込もう』とか考える者は、信じられない。それに欲しいのは子じゃなく、祝の力でしょう?」


「なっ、んで。」


「社の司ですがね。元は、継ぐ子ですよ。」




宝玉の祝は、心の声まで聞こえるのか。


風を操れて、心が読める。欲しい。その前に良村、いや良山よいやまに入る前に、何としても奪わなければ。何だ、その目は。あっ、しまった。



「何が『しまった』ですか。」


・・・・・・。


「祝辺の守。人でも隠でも同じ、欲しいのは祝の力でしょう?」


・・・・・・。


「武田も祝辺も、良村を敵に回す気ですか。」





めときな。」


「忍びが動くぜ。」


雲と影、揃ってニヤリ。


「良村の子だ、良村で育てる。」


シゲが低い声で、言い切った。




「奪う気なら、許さない。」


川田のゴロ。


「子の幸せを壊す気か?」


馬守のイク。


「攫う気じゃ、ないよな。」


岩割のセキ。



忍び二人に、狩頭二人。おさと社の司が、一人づつ。今だけでも良村には、六人。対してオレには、烏が一羽。岩割の長は、縄使い。直ぐに縛り上げるだろう。


それに、だ。狩り人三人に、忍び二人だぞ。どう前向きに考えても、勝てないだろう。・・・・・・クソッ。



「諦めなさい。良村の子は、良村で。」


釜戸の祝、エイも加わった。


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