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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
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6-156 天誅


釜戸社かまどのやしろに集まった、おにや妖怪たちは思った。『コイツ、サッサと片付けよう』と。


クドイようだが、釜戸社に集まったのは、人だけでは無い。神に仕える隠や、妖怪たち。神として祀られた隠や、強い力を持つ妖怪まで。



釜戸社にいる人たちは、思った。『コイツ、なぜ逃げ切れると思っているんだろう』と。


ワッと引き千切られたとしても、誰も驚かない。『ヤッパリね』である。






「なっ、何がぁぁ。」


怖じ気付いて逃げようとしたケイを、犬がガブリ。犬飼いが掴んで、ドサリ。


「北山のケイ。そのまま黙って、聞け。」



オマエには見えないだろうから、教えてやる。


裁きが始まった時から、いらしたんじゃ無い。北山のめかんなぎおかんなぎ。連れて来てくださったのは、宝玉神たかたまのかみの使わしめ、ケロさま。少し遅れて、他の皆さまが。


ずっと前から『北山社きたやまのやしろに、攫われた人が集められ、隠されている』『逃げ出した人が、山で獣に襲われた』と、狩り人や忍びの間で、噂になっていた。


知ってたんだ、それでも踏み込めなかった。生きて助けを求める人が、居なかったから。


あちこち探して、闇に気付く。


怪しい、探る。入れない、ココだ。なのに、どうにも。なぜだ、オカシイ。考えられるのは、闇。いくら使わしめでも、闇には入れない。祓おうにも深すぎて、障りがある。





「そうだ! 全て、言い掛かりだ!」


「はぁ? 良く考えろよ、なぜ遅れたのか。」



北山社は、深い闇に覆われていた。巫や覡も、同じように。だから一先ひとまず、遠ざける。そこまでは、何とか。


闇を消すには、闇を纏う使わしめの、強い力が要る。珍しい力だ、探すのは難しい。


北山には北山社の他に、牙滝社きばたきのやしろがある。


北山神きたやまのかみは、御隠れに。牙滝神きばたきのかみは、御坐おわす。代替わりされたがねずみの隠、チュウさまは神のおおせにより、残られた。闇を切り裂く力を、お持ちだ。


しかし、果たせなかった。闇が深すぎた。



訴えられない限り、釜戸社は動けない。乱雲山でも、霧雲山でも動けない。困り果てていた時、北山から逃げた子が生きたまま、助けられた。訴えにより、釜戸社がぐに動いた。


ここまで言えば、解るだろう。


一で果たせなければ、数多あまたで掛かれば良い。牙滝神に守られたチュウさまにより、食い破られた闇は小さいが、神の御力で閉じずに揺らぐ。その隙に、光の力で。




北山社が隠し通した、全てが明らかになったのさ。だから遅れて、いらした。御存じなんだよ。その御力で御覧になり、御知りされた。


攫われた祝や、祝の子が、どうなったのか。めぐし子の今わを、今を。



死んだ者は戻らない。罪を犯した者が許され、社で神に仕える事も無い。薬で壊されたから、毒に侵されたからと許される程、甘くない。



釜戸社に救われるも、男は歳に関わらず、死を選んだ。犯した罪の重さに耐えきれず、自ら罰を。


命を奪えば、命で贖う。死をもって償うより他、無い。



死んだ人の魂は、生まれ育った地へ戻る。隠となり、守りたい全てを、そっと見守る。しかし、北山によって歪められた心と魂は、清められても戻れない。重すぎる。





「御怒りなのだ。」


「っんな事、知った・・・・・・。」


雲の目を見て、ケイは言の葉が出なくなった。


たとえ人は騙せても、神や隠、妖怪は騙せない。」




頭の中に、死んだ人の声がドッと、流れ込んできた。耳を塞いで叫んでも、止まらない。


ケイは血走った目で空を掴み、胸を押さえる。鼻血を出しながらガタガタ震え、口から泡を吹き、ガクッと項垂れた。



「仕置場へ!」


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