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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
321/1634

6-155 譬え人は騙せても


「何を待てと。」


「良く考えなさい。子の気が短いのは、むを得ない。しかし、祝なら。ここまで言えば、解るね?」


・・・・・・?  一同、ポカン。



確かに、子だ。だから、どうした。


子だが、釜戸社かまどのやしろの祝。これまでシッカリ、務めを果たしている。これからだって、変わらない。



「北山の地において、社の司でありながら、多くの命を奪った。よって、死をもって償わせる。北山のケイ。その命でもって、あがなえ。」


「嫌だ、断る。考え直せ!」


「・・・・・・命を奪えば、命で贖う。」


「それは違う。命は神から与えられた、とうといもの。人がドウコウする?  有り得ない。」


・・・・・・ハァ?




コイツ、何を言ってやがる。


祝を、祝の子を攫ったくせに。耶万やまの毒で、壊したくせに。力を持つ子を産ませるために、物扱い、したくせに!



「そもそも、オレは悪くない。」


死んでたまるか! 釜戸の祝は、子だ。なんとでも。そうさ。言いくるめるくらい、軽い軽い。


「耶万の夢、いや毒を使って、多くの人を。全て明らかになり、あかしもある。のがれられない。」


「そんなモノ、当てにナラナイ。」


大人の言うコトは、聞いておけ。オトナシク良い子にしていれば、それでイイんだよ。フッ。



「祝。宜しいでしょうか。」


雲が堪らず、申し上げる。


「申せ。」


エイの声が少し、柔らかくなった。




「北山のケイ。逃げるな、受け入れろ。」


ここにはな、おにが多いんだ。


オマエに守りたい人を奪われたり、命を奪われた人たちが死んで、隠に。そういう人たちは、生まれ育った地を守る。


ここまで言えば、分かるだろう? 態態わざわざ、釜戸山まで御越しくださったんだ。



オマエには見えないだろうが、使わしめ。同じ神に仕えた、隠や妖怪。集まったのは、人だけじゃナイんだよ。


見えない、聞こえない。だから怖くないし、恐ろしくも、ないんだろう。けど見える、聞こえる人たちはなぁ。



ハッキリ言おう。怖いんだよ、恐ろしいんだよ。


何で分からないんだ。こんなにもピリピリしているのに。こんなりも重苦しいのに。



守りたい人が、いなくなる。攫われて、奪われる。あちこち探し回って、あちこち頼み回って。それでも見つからない。


きっと、どこかで待っている。きっと、どこかで生きている。そう信じて、決して諦めず、来る日も来る日も、探し続ける。



釜戸社から人が来て、やっとだ。


手掛かりを求めて、北山へ飛ぶ。なのに入れない、近づけない。となれば、だ。考えられるのは、唯一ただひとつ。北山社きたやまのやしろが、深く関わっている。



北山神きたやまのかみ御坐おわせば、御頼み申し上げる。しかし、御隠れに。なら、どうする。


隠のときや妖怪の墓場があれば、そこから行ける。でも、どちらも無い。牙滝社きばたきのやしろを頼っても、どうにも。




「だっ、から、何を言っている。」


「だ・か・ら、逃げるな。受け入れろ。」


雲は思わず、顳顬こめかみを押さえた。


「耶万の毒とか、闇とか。知らん、知らんぞ!」



ドンガラ、ビッシャァァァァン! グラグラグラァァァ。ビリビリビリィィィィ。


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