6-154 本気、出しちゃうよ
北山の社の司、巫に覡も。何も見えないし、聞こえない。それなのに神の御告げだと偽り、多くを壊した。
心、魂、光。祝の力を求めて攫い、追い詰めた。更に、更に強い力を求め、子を・・・・・・。
北山社。
神は御隠れに、使わしめも消えた。残った祝は長を止められず、自ら命を。
柱が折れれば、倒れ壊れる。北山に残されたのは、深い怒りと悲しみ。
戦、戦で人が死に。戦、戦で里は荒れ。戦、戦で心を無くし。戦、戦で闇が広がる。
里から村へ、村から国へ。闇を纏った長の目に、暮らす人など入らない。
思うがままに動かして、弱い者から騙し得る。根こそぎ奪って、高笑い。死ぬまで奪って、知らんぷり。儲けは全て、独り占め。別け配るなど、考えない。
楽して得する事だけを、求め続けて、こうなった。
社の司、巫、覡。神に仕える者たちが、神を語って悪巧み。
北山には、牙滝社がある。北山社を排しても、差し支えない。とはいえ、御隠れになったと知らず、北山神を崇める人も。・・・・・・少ないが、残っている。
「フゥ。」
「エイ? 疲れたなら少し、休みなさい。」
フシャァと激怒していたが、一瞬で冷静になった。
「ポコさま。ありがとうございます。」
ニコッ。
神の仰せだからと、釜戸社へ来ようとしなかった、北山の巫と覡。
宝玉神の使わしめ、ケロさまに引っ立てられたのに、神の御業だと思い込んでいる。
どんなに騒いでも、変わらないのに。
偽れないよ、明らかになったから。嘘ついたって、隠したって、全て知られる。人は隠や妖怪には、決して勝てない。受け入れなさい。
北山社の、捕らえた社の司に見えない事は、はじめから分かっていた。巫にも覡にも、見えないと判った。だから、迷わない。
・・・・・・この度の裁き。多くの社から、使わしめが御越しくださった。つまり、大いに御怒りなの。
攫われた祝や、産まされた子が生きているのか、死んでしまったのか。どのように生き、死んだのか。どのように生き、殺されたのか。
ケロさまが御力を使われた。という事は、北山に張られていた薄皮が。隠や妖怪が出入りし、隠されていた全てが、明らかに。
長や社の司だけだったのに、気付けば数多。
宝玉神の使わしめ、ケロさま。水勢神の使わしめ、シラユキさま。日吉神の使わしめ、クロさま。蔦神の使わしめ、ミャアさま。鴫山神の使わしめ、マイさま。茅野神の使わしめ、ヤノさま。三鶴神の使わしめ、ハツさま。
皆さま、とても悲しそうな御顔を・・・・・・。
恐らくは、北山に閉じ込められていた魂を迎えに。そこで御覧に為られたのでしょう。全てを。
「仕置を言い渡す。北山社、社の司ケイ。死をもって、償わせる。その命でもって、贖え。」
「ま、待ってくれ。ヒィィ。」
「ウゥゥゥ。」 カマレタイノカ。
釜戸山の犬は、顎の力が強い。大きな犬になると、勢い余って噛み切る事も。まぁ、稀だが。
ソレは扨置き。控え目に言って、ワンコたち。噛みつく気、マンマンである。
ここは釜戸社。
裁きが行われているのに、祝の言の葉を遮った。いつもなら『仕置場へ』と、続くのだから。
人に比べれば、犬の頭は小さい。けどな。オレたち、ちゃんと覚えているゾ!




