2-22 旅立ち
「ツウとコウ。釣り人の村から、釜戸社へ。」
シロは驚いた。えぇぇ、守り人の村じゃなくてぇぇ。
「その方が、早い。」
えぇぇぇぇ。それは、そうですが。
「何か。」
エイさま、怖い。
「あの、エイさま。決まりでは、社へは。」
「釜戸山へ入る許し、すでに出した。守り人の村ではなく、釣り人の村で待たせた。なぜ。」
「そ、れは。早稲の。」
「早稲の。」
「見つからないように。」
「ように。」
「ハッ。そうでした。い、いって参ります。」
シロ、大慌て。エイ、思わず溜息。
二人の子は直接、釜戸社へ向かった。釣り人の村から馬に乗って。
釜戸社の祝、エイさま。この向こうに居られる。それにしても、大きな社だなぁ。とっても広い。
「ツウ、コウ。乱雲山、雲井社へ。」
乱雲山か。雲井社の祝は、遠くにいる人と話が出来る。そんな力があるって、ゴロさんが言っていた。
「狩り人タカ、オタ。ツウとコウ、二人の子。傷一つ付けず、乱雲山へ、送り届けよ。」
サッと平伏した。あれ、同じようにしなきゃいけなかったのかな。
「良い。ツウ、コウ。気に病むな。」
す、すごい。
「木菟、鷲の目。四人のこと、頼みます。」
「はい。」
えっ、いつの間に。木菟も鷲の目も、祝辺の守の忍び? とかいうんだよね。確か。
「これを。」
祝人がススッと、奥から出て来た。木の器の上には、布に包まれた何かがある。
「守り札です。」
そうか、これが守りの札か。
「ありがとうございます。」
平伏した。これで、いいんだよね。
馬に乗り、釣り人の村に戻った。
「おかえり。ツウ、コウ。」
「ただいま戻りました。」
出で湯に浸かって、夕餉を食べた。朝が来たら、乱雲山へ発つ。小さくてもいい、争いのない村をつくろう。ツウとなら、何だって出来る。そんな気がする。
「ツウ。」
「なあに、コウ。」
「十二になったら、オレと契ってくれ。」
「はい。」
ボッと赤くなった。
旅立ち編でした。
早稲編へ続きます。お楽しみに。




