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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
319/1634

6-153 胡散臭い


フシャァァっと、怒るポコ。ゲコッと、怒るケロ。見合って頷き、スタンバイ。


「ポコさま、ケロさま。お待ちください。」


「止めるな、雲。」


「使わしめが闇に染まれば、神に。」




「黙れ! かえるの次は、たぬきか。どれだけ蛇神様をォォォ。」


冷たい風に、軽く吹き飛ばされたケイ。


「呼んだか?」


元、牙滝神きばたきのかみ。ビュン、と参上。




楽しそうなマルをでていた大蛇おろち釜戸社かまどのやしろから『蛇神様』と聞こえるたび、首を傾げた。


今この時、釜戸山にいる蛇神は、大蛇だけ。しばらくして、『牙の滝の、大いなる蛇神様』と。


これは捨て置けない。コッコにマルを託し、急ぎ釜戸社へ。





「これは蛇神様。」


あれ? 見えてる。


先程さきほどは、有難う御座いました。背を叩いて頂き、力がみなぎりました。」


・・・・・・叩かれた?  蹴られたんだよ、狸に。


ただちに釜戸の祝を縛り、生けにえとして連れ帰ります。」


「噴き出すぞ。」


「は?」


「良く聞け、愚か者。」



エイは祝で、釜戸神かまどのかみめぐし子。裁きに使わしめを向かわせ、守らせた。


そもそも、ここは釜戸社。祝を攫うなど、どんなに前向きに考えても、有り得ない。祝の父と伯母、従弟も居る。それこそ、死に物狂いで守るだろう。



加えて社の司、禰宜ねぎ、祝女、祝人。狩り人、犬飼い、しつけられた犬。


たとやしろを出られても、あちらこちらから、強者つわものたちが集まる。その全てを振り切り、山を出られると?



「それに何だ。愛し子を、神の生け贄になど。どの神が求めた。申せ!」




北山神きたやまのかみです。」


めかんなぎおかんなぎが胸を張り、言い切った。


「牙の滝の蛇神様、我らを北山へ。」


ケイと巫、覡の三人が平伏した。



・・・・・・?  一同、揃って目が点になる。




蛇神はプカプカ、浮いて為さる。


三人が平伏した先には、アングリと為さる釜戸神かまどのかみめぐし子を生け贄にと聞き、裁きの場へ乗り込まれたのだ。


見える者は皆、頭を抱える。これ、どぉすんの。




大蛇は、姿を見せている。


蛇は浮かないし、言の葉だって話さない。赤い目をした、白くて大きな蛇。どう考えても、牙の滝を離れられた、蛇神様だ。



「北山神は、うの昔に、御隠れされた。」


「何をおっしゃるのですか、蛇神様。」


そちらに御坐おわすは、釜戸神!  蛇神は、上!





「ウギャッ、ハッ。神はおおせです。『捨て置け』と。」


巫が、ドヤ顔で。


「グハッ、ハッ。神は仰せです。『四の五の言わず、祝を捕らえよ。奪われた全ての者を、北山に戻せ』と。」


覡も、ドヤ顔で言い切った。




・・・・・・ハァ。


溜息をつき、憐れむような目で、北山の三人を見る。イロイロありすぎて、何も言えない。


巫も覡も、叫んで倒れて起き上がらないと、何も言えないのだろうか?


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