6-153 胡散臭い
フシャァァっと、怒るポコ。ゲコッと、怒るケロ。見合って頷き、スタンバイ。
「ポコさま、ケロさま。お待ちください。」
「止めるな、雲。」
「使わしめが闇に染まれば、神に。」
「黙れ! 蛙の次は、狸か。どれだけ蛇神様をォォォ。」
冷たい風に、軽く吹き飛ばされたケイ。
「呼んだか?」
元、牙滝神。ビュン、と参上。
楽しそうなマルを愛でていた大蛇。釜戸社から『蛇神様』と聞こえる度、首を傾げた。
今この時、釜戸山にいる蛇神は、大蛇だけ。暫くして、『牙の滝の、大いなる蛇神様』と。
これは捨て置けない。コッコにマルを託し、急ぎ釜戸社へ。
「これは蛇神様。」
あれ? 見えてる。
「先程は、有難う御座いました。背を叩いて頂き、力が漲りました。」
・・・・・・叩かれた? 蹴られたんだよ、狸に。
「直ちに釜戸の祝を縛り、生け贄として連れ帰ります。」
「噴き出すぞ。」
「は?」
「良く聞け、愚か者。」
エイは祝で、釜戸神の愛し子。裁きに使わしめを向かわせ、守らせた。
そもそも、ここは釜戸社。祝を攫うなど、どんなに前向きに考えても、有り得ない。祝の父と伯母、従弟も居る。それこそ、死に物狂いで守るだろう。
加えて社の司、禰宜、祝女、祝人。狩り人、犬飼い、躾けられた犬。
譬え社を出られても、あちらこちらから、強者たちが集まる。その全てを振り切り、山を出られると?
「それに何だ。愛し子を、神の生け贄になど。どの神が求めた。申せ!」
「北山神です。」
巫と覡が胸を張り、言い切った。
「牙の滝の蛇神様、我らを北山へ。」
ケイと巫、覡の三人が平伏した。
・・・・・・? 一同、揃って目が点になる。
蛇神はプカプカ、浮いて為さる。
三人が平伏した先には、アングリと為さる釜戸神。愛し子を生け贄にと聞き、裁きの場へ乗り込まれたのだ。
見える者は皆、頭を抱える。これ、どぉすんの。
大蛇は、姿を見せている。
蛇は浮かないし、言の葉だって話さない。赤い目をした、白くて大きな蛇。どう考えても、牙の滝を離れられた、蛇神様だ。
「北山神は、疾うの昔に、御隠れ為された。」
「何を仰るのですか、蛇神様。」
そちらに御坐すは、釜戸神! 蛇神は、上!
「ウギャッ、ハッ。神は仰せです。『捨て置け』と。」
巫が、ドヤ顔で。
「グハッ、ハッ。神は仰せです。『四の五の言わず、祝を捕らえよ。奪われた全ての者を、北山に戻せ』と。」
覡も、ドヤ顔で言い切った。
・・・・・・ハァ。
溜息をつき、憐れむような目で、北山の三人を見る。イロイロありすぎて、何も言えない。
巫も覡も、叫んで倒れて起き上がらないと、何も言えないのだろうか?




