6-152 狸ック
出るわ出るわ。
耶万の毒に、別の割符。緑、赤、薄い青の勾玉。耶万の物だが、風見でも使われている。
「申し開き出来るなら、申せ。」
「・・・・・・オレは悪くない。」
・・・・・・?
「巫、覡だ。神の仰せだ!」
ガタガタ、ガタガタァァァ。
釜戸社に集まったのは、人だけではナイ。使わしめ、隠、妖怪。挙って参り、加わった。
先から黙って聞いて居れば、好きなように振る舞いよって! 居らん者に被せて、逃げ果せるとでも?
「待たせたな。ゲコッ、ペッ。」
北山の巫と覡が、白い蛙の口から吐き出された。
「オオッ、神よ。北山の蛇神様が、私のために!」
・・・・・・? いや、蛙だよ。蛇神様は離れで、愛し子を守っています。
「見たか、愚か者ども! 私に罪は無い。」
・・・・・・? な・ん・で、そうなるの。
「トクよ。この男、消そう。」
「お待ちください、ケロさま。宝玉神の御許し無く、裁けません。それにもし、闇堕ち為されば。」
「それも、そうだな。ヨシ、叩き潰そう。」
前足を高く上げ、ケイの頭の上へ。
「ハハッ、ハハハ。ケロだと? 蛇神様を、蛙のような名で呼ぶな!」
・・・・・・? 蛙です。
「トク。ペチャでは無く、ベチャッと潰す。許せ。」
「お待ちください! ケロさまの御御足が、汚れてしまいます。」
えっ、そっち?
「恐れながらケロさま。釜戸社に、お任せください。」
エイが御願い申し上げる。
「フム、分かった。」
見える者、揃ってホッ。
「釜戸の祝まで、蛇神様を侮るか。」
いや、オマエが言うな。
「まぁ良い。牙の滝の、大いなる蛇神様。私に免じて、御許しを。」
・・・・・・? だ・か・ら、蛙ですって。
「社の司なのに、見えぬのだな。良く解った。」
「何を言い出すかと思えば、釜戸の祝。子なら子らしく、お外で遊びなァッ。」
釜戸神の使わしめ、ポコ。狸ック、炸裂! 見えないケイは、大慌て。
「申し訳ありません。今、直ぐ、黙らせます。」
イヤイヤ、オマエが黙れ。見える者たち、激しく突っ込む。
「ヴヴヴヴ、ヴァァア。」 バタッ。
「ヲヲヲ、ヲォォォ。」 バタッ。
北山の巫と覡が、イカニモな感じて身悶え、叫び、倒れた。
倒れるのは良いが、ケロの胃液か唾液かが、倒れた拍子に飛び散った。
一同・・・・・・。
黙って取り出した布で、フキフキ。そっと仕舞う。
「神は仰せです。『釜戸山に攫われた祝と子を、残らず北山へ戻せ。生け贄として、釜戸社の祝を差し出せ』と。」
体を起こして直ぐ、巫が。
「神は仰せです。『蛇神に送らせた者に、決して触れるな。手厚く持て成し、社の司と共に、北山へ戻せ』と。」
巫につづいて、覡まで。
「聞いたか、皆の者。神の仰せだ、従え!」
釜戸社に集まった、見える人たちは思った。『あぁコイツら、逃げる気だ』と。
逃れられるワケないのに。




