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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
318/1634

6-152 狸ック


出るわ出るわ。


耶万やまの毒に、別の割符わりふ。緑、赤、薄い青の勾玉まがたま。耶万の物だが、風見かぜみでも使われている。



「申し開き出来るなら、申せ。」


「・・・・・・オレは悪くない。」


・・・・・・?


めかんなぎおかんなぎだ。神のおおせだ!」




ガタガタ、ガタガタァァァ。


釜戸社かまどのやしろに集まったのは、人だけではナイ。使わしめ、おに、妖怪。こぞって参り、加わった。


さっきから黙って聞いて居れば、好きなように振る舞いよって!  居らん者にかぶせて、逃げ果せるとでも?





「待たせたな。ゲコッ、ペッ。」


北山の巫と覡が、白いかえるの口から吐き出された。


「オオッ、神よ。北山の蛇神様が、私のために!」


・・・・・・?  いや、蛙だよ。蛇神様は離れで、めぐし子を守っています。


「見たか、愚か者ども! 私に罪は無い。」


・・・・・・?  な・ん・で、そうなるの。


「トクよ。この男、消そう。」


「お待ちください、ケロさま。宝玉神たかたまのかみの御許し無く、裁けません。それにもし、闇堕ち為されば。」


「それも、そうだな。ヨシ、叩き潰そう。」


前足を高く上げ、ケイの頭の上へ。




「ハハッ、ハハハ。ケロだと?  蛇神様を、蛙のような名で呼ぶな!」


・・・・・・?  蛙です。


「トク。ペチャでは無く、ベチャッと潰す。許せ。」


「お待ちください! ケロさまの御御足おみあしが、よごれてしまいます。」


えっ、そっち?



「恐れながらケロさま。釜戸社に、お任せください。」


エイが御願い申し上げる。


「フム、分かった。」


見える者、揃ってホッ。




「釜戸の祝まで、蛇神様をあなどるか。」


いや、オマエが言うな。


「まぁ良い。牙の滝の、大いなる蛇神様。私に免じて、御許しを。」


・・・・・・?  だ・か・ら、蛙ですって。



「社の司なのに、見えぬのだな。良く解った。」


「何を言い出すかと思えば、釜戸の祝。子なら子らしく、お外で遊びなァッ。」


釜戸神かまどのかみの使わしめ、ポコ。狸ック、炸裂!  見えないケイは、大慌て。



「申し訳ありません。今、ぐ、黙らせます。」


イヤイヤ、オマエが黙れ。見える者たち、激しく突っ込む。






「ヴヴヴヴ、ヴァァア。」 バタッ。


「ヲヲヲ、ヲォォォ。」 バタッ。


北山の巫と覡が、イカニモな感じて身悶え、叫び、倒れた。



倒れるのは良いが、ケロの胃液か唾液かが、倒れた拍子に飛び散った。


一同・・・・・・。


黙って取り出した布で、フキフキ。そっと仕舞う。




「神は仰せです。『釜戸山に攫われた祝と子を、残らず北山へ戻せ。生けにえとして、釜戸社の祝を差し出せ』と。」


体を起こして直ぐ、巫が。


「神は仰せです。『蛇神に送らせた者に、決して触れるな。手厚く持て成し、社の司と共に、北山へ戻せ』と。」


巫につづいて、覡まで。



「聞いたか、皆の者。神の仰せだ、従え!」





釜戸社に集まった、見える人たちは思った。『あぁコイツら、逃げる気だ』と。


逃れられるワケないのに。


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