6-151 いろんな意味で、逃げられない
「おや、切れかけていますね。吸いますか?」
小さな布袋を、ちらつかせた。するとケイは袋を引っ手繰り、ガタガタ震えながら・・・・・・。
「雲、手伝ってくれ。」
「オウ。」
忍びが二人掛り。
ケイに勝ち目は無い。アッサリ手足を縛られ、後ろで括られた。口には布を噛まされ、話せない。
耶万に扮していた影は繕いを解き、サッと平伏した。
「はじめまして、祝。心消の忍び、影です。」
良山に許し無く入った耶万が、トンデモナイ薬を持っていた。それは、アンリエヌで差し止められている薬に混ぜ物をして、更に危なくした物だ。という話、お耳に入っていると思います。
そこで耶万を調べるため、深く潜ろうと。
時が掛かると思ったのですが、思いの外、早く手に入りました。こちらが、証です。
祝人が差し出した盆に、そっと置く。
「これは?」
「割符です。」
木や竹で作った、掌に乗る位の板に、刃で印を付けます。それを二つに割った物です。
一つを与えて、他の1つを留め置きます。後日、合わせて見て、証とします。
これは山裾の地を目指していた耶万が、懐に入れていた物です。危ない薬と共に、隠し持っていました。
捕らえた耶万は、縄でギリギリ縛り上げ、良村に預けてあります。
担ぎ込もうと思ったのですが、国と国の話し合いです。釜戸山では無く、乱雲山かと。
加えて、この度の北山の裁き。耶万の夢が関わっていると判り、急ぎ参りました。
「先、北山のケイが吸ったのは、釜戸山で拾った、乾いた落ち葉です。障り、ありません。」
「祝。宜しいでしょうか。」
影に続いて、雲が。
「申せ。」
「北山の、ケイの懐を探らせましょう。そちらの割符の一つを、隠し持っていると思います。」
影と雲が、ケイをグルグル巻きにしなかったのは、このため。打合せ通り?
犬飼いと狩り人が押さえ付け、祝人が探る。暫くするとスッと、影が耶万から手に入れた割符と、良く似た物が。
盆に置き、祝の元へ。
直ぐに戻された盆には、割符が二つ。釜戸社の禰宜、ロクが皆の前で、二つを合わせる。すると、ピッタリ。
「ンググ、ングゥ。」
噛ませられた布を解くと、ケイが叫ぶように言った。
「そんなモノ、知らん!」
「コイツ、布袋。持ち込んだよな。」
馬守の狩長、イクがポツリ。
「裁きに要る物でも、入っているのかと。」
良村の長、シゲもポツリ。
「どんな獲物が入っているんだろうな。」
川田の狩頭、ゴロもポツリ。
「禰宜、中を検めよ。」
釜戸社の祝、エイ。つられて? ポツリ。




