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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
315/1634

6-149 返せ。元に戻せ!


祝女として神に仕え始めてぐ、いなくなった。


美しく、強い力を持っていた。手分けして探したが見つからず、狩り人を頼った。他の村や国の狩り人も、妹を探してくれた。


探して探して、探し続けた。


これだけ探して見つからないんだ、神隠しだろう。そう言われ、目の前が暗くなった。神隠し? 違う! 妹は、サヤは人に攫われたんだ。



私は諦めなかった。


祝に頭を下げ、祝の力で探してもらった。それでも見つからない。他のやしろを訪ね、頭を下げ、祝の力で探してもらった。それでも見つからない。


宝玉神たかたまのかみ、使わしめケロさま。おに、妖怪。方方ほうぼうに頭を下げ、御願い申し上げた。それでも見つからない。



しかし、分かった事もある。


サヤは神隠しに、あったんじゃ無い。人に攫われたのだ。一年ひととせ二年ふたとせ三年みとせ四年よとせ五年いつとせかかって、やっと。



父も母も、弟も妹も死んだ。


冬にいくさなんか始めやがって! オレにはサヤしか、いなかったんだ。みんな死んだが、サヤは生きている。そう信じて、探して探して。






「オマエに分かるか、ケイ。憧れていた祝女になって、社の衣を着て、嬉しそうにクルクル回って・・・・・・。」



七つで継ぐ子に、十で・・・・・・。たった十の女の子が、いきなり親と離されて、知らない男に。


子だぞ、まだ子だ。それなのに手足を押さえ付けられ、薬漬けにされた見ず知らずの男に。痛かっただろう、怖かったただろう。


泣いた筈だ。嫌がった筈だ。『めて』って、頼んだ筈だ!



五年の間に三人産まされ、二人は死んで出たんだってな。四人目を身籠って、あの戦だ。たった一人の娘に、ひもじい思いをさせたくなくて、食べ物を。



他の誰かのじゃ無い。配られた食べ物を、我が子に与えた。それで、それだけで殺すか?


姪は話せない。話せなくなった。言の葉は出るが、話にならない。目の前で蹴り殺されたんだ、母を。




「返せ。妹を、サヤを返せ。元に戻せ!」


トクはガッと立ち上がり、ケイの胸倉を掴んで殴りかかった。


「離せ、離してくれ。」


眉間に皺を寄せ、声の限り叫ぶ。








「落ち着け。コイツを殺しても、妹は戻らない。」


「オマエに何が分かる!」


「・・・・・・オレの妹も攫われ、穢された。」



同じだよ。十で早稲わさせがれ、ジンにな。



美しく、優しい子でな。オレは死んだ父に代わって、母と弟妹を守っていた。


ある日、狩りから戻ったら、村が襲われていた。母とセツは山に入っていて、助かった。弟と他の妹は、死んだ。殺された。


隣の村のはな、狙ってたんだ。だから攫った。母さんとセツを。



オレは直ぐに動いて、取り戻した。


なのに、助け出せたのに、次は早稲に攫われたんだ。守り切れずに深手ふかでを負って、死にかけた。死の淵から戻って直ぐ、乗り込んだよ。けど、遅かった。



好きでもない男の子を、二人産んだよ。


妹を質に取られて、言い成りになった。情けない兄さ。それでもセツには、オレしか。だから生きた、生きて戻った。




だいぶ経って、セツは重いやまいかかった。


咳が止まらなくて、血を吐いて。・・・・・・弱って死んだ。残された子も、同じ病で。




「オレには残っていない。けど残ってるじゃないか、姪っ子がさ。」


シゲに諭され、トクが泣き崩れた。


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