表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
314/1634

6-148 ふざけるな!


祝は、やしろの柱。


社の司が仕切り、禰宜ねぎが細かい事を担い、祝は寄り添い、祈りを捧げる。


おにに出来ない事をして、妖怪に出来ない事をして、人にない力を使い、暮らしと幸せを守る。


大きな力に押し潰されそうになりながら、生まれ持った定めに従う。




どんなに小さな村でも、隠れ里でも、奉り祀る。


隠は祀られれば、神になる。妖怪は認められれば、神に御仕えする。隠も妖怪も争いを嫌い、生まれ育った地を守り、全てを慈しむ。




めかんなぎおかんなぎとは、違う生き方を強いられ、辛く苦しい試しに耐え忍び、生きる事を諦めない。そんな祝を攫った。そんな祝の子を、攫った。



欲にまみれ、力を求める。奪い、奪われ。憎み、憎まれ。渦巻く闇に飲み込まれ、心を失う。


無いものを求めるのが、人。無いなら無いで悩み考え、作れば良い。なのにひたすら、罪を重ねた。



珍しい力や、強い力を持つ祝や子を、躊躇ためらう事なく、次次つぎつぎと攫った。



北山は、山裾の地のきわにある。北川を下れば蛇川に、北川を上れば乱れ川に出る。あちこち回って噂を聞き付け、攫う祝や子を選ぶ。狙いを定め、っ攫い、閉じ込めた。






翼をがれた鳥は、飛び立つ事が出来ない。染められた布は、白くならない。割れた壺は水をたたえず、死んだ者はよみがえらない。


傷つき、罅割ひびわれ、砕けた魂は闇に囚われ、うごめく。声にならない叫びが、心と体をべ、縛る。




『嫌だ』『助けて』『めて』『許して』


祝女も祝人も、声が潰れるまで、願い続けた。それなのに、いた。






「それが何だ。それが、どうした。」


北山のケイが叫ぶように言い、にらむ。


「何だ、どうした? 解らぬか、分からぬのか。」


エイの心に、冷たい風が吹いた。



祝がいない国は、北山だけじゃ無い。東山にも、いない。玉置と川北の国から、『祝の力が弱まっている。何とかしてくれ』と、申し入れが。


北山、東山、玉置、川北。どの国も戦好き。


地が震え、備えが燃えたからと、冬なのに戦を起こした。神から見放された、隠から見捨てられた。なぜ、そう考えぬ。



神は御守りくださる。遠くから、御守りくださる。隠は常に寄り添い、大きく強い力をふりい、御守りくださる。


その神、隠に仕える祝を虐げ、弄び、死なせた。殺した。命だけでは無い。心も、魂も、壊した。





「ケイ。その醜い欲を満たすため、虐げ奪った数多あまたの命が、今も叫び続けている。」


従えるために、薬という名の毒を飲ませた。飲まされた人は皆、苦しみ悶え、死をこいねがう。


聞こえないか? 地を這うようなうめき声が。繰り返し、繰り返し。『殺してくれ』『死なせてくれ』と。




「だから何だ。そんなモノ、オレは持ってない!」


・・・・・・。


「オレが飲ませたなら、持っている筈だ。」


・・・・・・。


「どこにある。見せろ!」


・・・・・・。






「ふざけるな!!!」


じっと耐えていた男が、泣き叫んだ。



玉置の国、宝玉社たかたまのやしろ。社の司、トク。末の妹を攫われ、やっと見つかったと聞き、喜んだのに。・・・・・・殺されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ