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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
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6-146 死が救いになるなんて


決まっていない者を、どこに託すか。・・・・・・気が、重い。何なんだ、北山は!




「どど、どうっ、どうっ。」


怖いコワイ恐ろしい。このままじゃ私、霧雲山で死ぬ。祝辺で殺される。どうしよう、どうしよう。


いくら見ても、いくら遣り直しても死ぬ。殺される。誰か助けて、御願い。御願いだから、誰か助けて!



婆さまも母さまも、この力の所為せいで苦しんだ。逃げて、見つかって、捕まって。また逃げて、攫われて。


ねぇ、なぜなの?


先読の力なんて要らない。欲しければ、あげる。だから、だからもう許して。



私が何をしたの。


母さんが父さんと出会って、恋をして、契って、私が生まれた。とっても幸せに暮らしていたのに、悪い事してないのに、殺された。


『逃げて。幸せを掴んで』って、私を逃がすためだけに。



お父さん、お母さん。会った事ないけど、お爺さん、お婆さん。会いたいよ。私、一人ぼっち。


もう、嫌だぁ。






「来る、来る、来る、来る。」


根の国へ行くなら、サッサと連れて行って。苦しいのも、辛いのも、もう、いいでしょう?


このまま生きていて、良い事ある? ないよね、ないの。


嫌、嫌、嫌! 気持ち悪い、あの目。何なの、何なのよ。お母さんを虐めて、楽しい? 死んじゃったよ、殺されちゃった。



お腹に赤ちゃんがいるって、お姉さんになるのよって。泣きながら笑ってた。


お母さん・・・・・・。


好きでもない男に、繰り返し繰り返し。助けて、助けてって、心の中で叫んでた。


私も大人になったら、させられる。そんなの嫌!



神様、いるなら助けて。生かしてくれなくて良いから、穢される前に殺して。






「ギャァァァァ。ブッ、グハッ。」


もう、嫌だ。嫌なんだ。見たくない、聞きたくない。・・・・・・帰りたい。


母さん、ごめんなさい。


女の人には、優しくしなさいって。嫌がる事は、してはいけませんって。男の子は強いから、女の子を守るのよって。



分かってるよ、覚えてる。忘れるもんか!


でも、でも、でも。・・・・・・オレ、悪い子です。死にたくなくて、痛いのが嫌で、北山の言い成りに。



あんな所から血なんて、出ないよね。


嫌がる事したから、出たんだ。痛そうだったもん。泣いてたもん。『痛い、めて』って。


きっと何か、罰を受けて死ぬんだ。そうでなきゃ、おかしい。



神様、いるなら殺してください。この苦しみから、御救いください。









北山から救われた人、全て。何処の誰だか、判っている。


壊され、歪んでしまっていると解った上で、引き取ると申し出た人には、託すと決めた。



受け入れ先の無い人には、身寄りが無い。


冬から春にかけて起きたいくさで、奪われてしまった。いろいろ、やっと落ち着いてきた。とはいえ、ゆとりなど無い。皆、かろうじて生きている。


戦を仕掛けなかった村は、どこも豊かだ。貧しいのは、戦を仕掛けた国や村。裁きを受け、死んだおさを激しく、憎んでいる。


誰かを憎まなければ、生きられない。憎まなければ、息も出来ない。そこまで追い詰められた人たちには、申し訳ないが託せない。



まだ子なのに、死をこいねがう。


神にすがり、諦め、逃げる。歪み、壊れ、生けるしかばねと化す。・・・・・・中には舌を噛み切り、死んだ者も。




死なせて良かった。死ねて幸せだった。そう思う程、安らかな死に顔だった。


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