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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
311/1634

6-145 狸にも、イロイロ


平良ひらの烏が飛び回っている。


纏めて引き取ると言い出す前に、見つけなければ。いる筈だ、祝女の孫が。



とはいえ、顔も知らない。手掛かりが無いのに、どう探す。祝は見れば判ると言っていたが、全く判らない。


守り人の村には、いない。となれば、釣り人の村。


・・・・・・見えん。見えるがもやが、かかっているようだ。おにの力、いや妖怪。水を操る蛇、幻を見せる狐か狸。






「フンッ。」


「鴫山さん、どうされました?」


宝玉たかたまさん、ありがとうございます。実はその、クシャミが出そうになりまして。」



玉置の国には珍しく、争うを嫌う変わり者。おにや妖怪が見えるだけ。社の司を務めるくらいだ、穏やかなんだろう。


祝は水を操り、歯向かう者を苦しめる。が、コイツに大した力は無い。それより、祝女の孫だ。



生まれた子には、守りの力が無かった。先祖さきつおやの力が目覚め、あらわれる事がある。北山で生まれた孫にも、力が無かった。だから闇に飲ませたと聞いたが、どうだろう。


牙の滝から飛び降りて、助かったのだ。




守りの力が何なのか、解らない。悪しきモノを遠ざけ、見えない薄い皮のような重なりを作るらしい。その皮を厚くして纏えば、身を守れる。


見つけたのが誰なのか、何処に託したのか。それさえ分かれば攫う、いや引き取るのに。



・・・・・・なぜ、玉置がいる。誰か引き取ったなら、釣り人の村に。ここにいる、という事は。



「玉置も誰か、攫われたのですか?」


「はい、姪が。・・・・・・助かりませんでした。」


「それはっ、その。」


「お気遣いなく。」



姪が産んだ子が、釜戸山に。宝玉社たかたまのやしろに仕える者の中には確か、風を操るのがいたな。祝女だったか、祝人だったか。


玉置のは男でも女でも、力を受け継ぐ。禰宜ねぎじゃなく、社の司が来たんだ。これは使える。どんなのでも優しく接して、取り込もう。



何が楽しいのか、ニコニコ、ニコニコと。頭ん中、空っぽか? 死んでも構わないから、外へ出したってトコだろうな。憐れだねぇ。







「狸が多いな。」


「寄り合いか何か、あるのですか?」


「ポンポコ腹鼓はらつづみをって、違うのだよ。」


エイよ。このたびの裁き、一山越ひとやまこすには、まだ掛かるぞ。


蛇神様のめぐし子、何としても守らねば。九尾ここのおの黒狐さまが、かたわらに。とはいえ、気を引き締めてな。


このポコも、力を尽くす。困った時、迷った時には必ず、頼るのだぞ。



「はい。」


ニコッ。



釜戸山に入った隠の多くが、激しく憤って居る。数多あまたの使いを引き連れて来た、妖怪も・・・・・・。


良村のマルのように、仔犬と楽しく戯れながら、御待ちくだされ。って、難しいだろう。釜戸山の犬は逞しい。



にしてもマルコよ、良かったな。育たないと言われていたのに、少し見ないうちに、大きくなって。って、お父さんか!



いかん、いかん。落ち着け、ポコ。


引き取られた子らは、隠たちが守る。幾人いくびとかは、ゆかりの者が引き取ると。その後ろにも、隠たちが。


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