6-145 狸にも、イロイロ
平良の烏が飛び回っている。
纏めて引き取ると言い出す前に、見つけなければ。いる筈だ、祝女の孫が。
とはいえ、顔も知らない。手掛かりが無いのに、どう探す。祝は見れば判ると言っていたが、全く判らない。
守り人の村には、いない。となれば、釣り人の村。
・・・・・・見えん。見えるが靄が、かかっているようだ。隠の力、いや妖怪。水を操る蛇、幻を見せる狐か狸。
「フンッ。」
「鴫山さん、どうされました?」
「宝玉さん、ありがとうございます。実はその、クシャミが出そうになりまして。」
玉置の国には珍しく、争うを嫌う変わり者。隠や妖怪が見えるだけ。社の司を務めるくらいだ、穏やかなんだろう。
祝は水を操り、歯向かう者を苦しめる。が、コイツに大した力は無い。それより、祝女の孫だ。
生まれた子には、守りの力が無かった。先祖の力が目覚め、現れる事がある。北山で生まれた孫にも、力が無かった。だから闇に飲ませたと聞いたが、どうだろう。
牙の滝から飛び降りて、助かったのだ。
守りの力が何なのか、解らない。悪しきモノを遠ざけ、見えない薄い皮のような重なりを作るらしい。その皮を厚くして纏えば、身を守れる。
見つけたのが誰なのか、何処に託したのか。それさえ分かれば攫う、いや引き取るのに。
・・・・・・なぜ、玉置がいる。誰か引き取ったなら、釣り人の村に。ここにいる、という事は。
「玉置も誰か、攫われたのですか?」
「はい、姪が。・・・・・・助かりませんでした。」
「それはっ、その。」
「お気遣いなく。」
姪が産んだ子が、釜戸山に。宝玉社に仕える者の中には確か、風を操るのがいたな。祝女だったか、祝人だったか。
玉置のは男でも女でも、力を受け継ぐ。禰宜じゃなく、社の司が来たんだ。これは使える。どんなのでも優しく接して、取り込もう。
何が楽しいのか、ニコニコ、ニコニコと。頭ん中、空っぽか? 死んでも構わないから、外へ出したってトコだろうな。憐れだねぇ。
「狸が多いな。」
「寄り合いか何か、あるのですか?」
「ポンポコ腹鼓をって、違うのだよ。」
エイよ。この度の裁き、一山越すには、まだ掛かるぞ。
蛇神様の愛し子、何としても守らねば。九尾の黒狐さまが、傍らに。とはいえ、気を引き締めてな。
このポコも、力を尽くす。困った時、迷った時には必ず、頼るのだぞ。
「はい。」
ニコッ。
釜戸山に入った隠の多くが、激しく憤って居る。数多の使いを引き連れて来た、妖怪も・・・・・・。
良村のマルのように、仔犬と楽しく戯れながら、御待ちくだされ。って、難しいだろう。釜戸山の犬は逞しい。
にしてもマルコよ、良かったな。育たないと言われていたのに、少し見ないうちに、大きくなって。って、お父さんか!
いかん、いかん。落ち着け、ポコ。
引き取られた子らは、隠たちが守る。幾人かは、縁の者が引き取ると。その後ろにも、隠たちが。




