2-21 羨ましいわけでは
シバが、霧雲山へ帰った。コウはシオから。ツウはアミから。いろいろ学んでいた。
三日くらいで、釜戸社へ。そう思っていたのに、どうやら、裁きが長引いているらしい。
「近ごろ、良くないことが・・・・・・多くてね。」
荒っぽい村は多い。三鶴、玉置、豊田。川北、武田、東山。北山、飯田。しかも、三鶴と玉置は、早稲と組んだ。
鳥の谷、シシの山、熊実、獣山。四つの狩り場は、釜戸山が守っている。とはいえ、決まりを守らない者もいる。
村に狩り場。裁きを待つ人たちが増えに増え、守り人の村だけではなく、狩り人の村の獄まで、いっぱいだ。
釣り人の村の獄だって、ゆとりがあるとは言えない。だから、守り人の村では、新たな獄を建てた。それでも足りないのだ。
「コウ。皆が皆、悪いわけじゃない。良い人だって、罪を犯す。そうなる前に、頼るんだ。助けてくれる人に、助けてもらえ。助け、助けられる。助け合い。見返りなんて、求めない。助けるのは、助ける人のためじゃない。助けることで、いつか助けてもらえるんだ。」
爺様も言っていた。助けるのは、その人のためじゃないって。
四月の後。
「釣り長。お待たせしました。」
「シロさま。もう、宜しいのですか。」
「何か、ありましたか。」
「いえ、獣谷の。」
「あぁ、はい。ありがとう。」
早稲の長と倅ジン、村人タツ。三人の仕置が、獣谷の仕置場にて、執り行われた。
シロは仕置場を清めるために、獣谷へ出向いていた。仕置にも立ち会ったから、二度も行き来したのだ。心も体も、クタクタだろう。
コンコン。
「釣り長。お呼びでしょうか。」
「二人とも、入っておいで。」
子が二人。稲田の子か。
「女の子がツウ。男の子がコウです。こちら、釜戸の社の司、シロさまだ。」
「はじめまして。ツウ、コウ。」
「はじめまして。シロさま。」
二人とも賢そうだ。コウは、ジロの孫らしいな。少し似ている。目元のあたり。それにしても、仲が良いな。
「シロさま。どうなさいました。」
「どう、とは。」
「いえ。ずっと、黙っておられるので。」
しまったぁぁ。怯えていたのか、二人とも。それで、手をつないで。
「いや、すまない。考え事をしていた。」
「そうですか。」
良かったぁ。ごまかせた。




