表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
308/1634

6-142 聞けば聞く程


北山は戦に勝つため、強い力を欲した。


はじめは体の大きな男、上手うまい弓引き、狩り人。そのうち『祝の力を使って、戦えないか』と、愚かな考えに取り付かれた。


その末に辿り着いたのが、祝攫いである。



攫われた祝女はぐ、同じく攫われた祝人の元へ、勢いよく放り込まれる。望まぬ事をさせられて、子を宿す。そして子を産み、死ぬ。


おさなければ、お産に耐えられない。



子を産めるのは、女だけ。だから祝人が多く、生き残った。次に多いのは子だが、酷い様であった。


孕んだ祝女たちの身の回り、お産の手伝い、後片付けを請け負う。血塗れになりながら。虚ろな瞳で、黙黙もくもくと。


闇に魅せられ、魂を売り払い、生けるしかばねと化した。






北山社きたやまのやしろから救い出された者は皆、壊れていた。壊されていた。



祝人は、重すぎる罪に押し潰され。祝女は、物として扱われた事で砕け散り。子らは、その全てをらす事なく、見せられて。


先見や先読の力を持つ者は、形振なりふり構わず逃げた。捕まっても、捕まっても、逃げ続けた。それでも捕まって、北山へ。


それから・・・・・・。





「聞けば聞く程、酷いな。」


ノリから話を聞き、ムロの話を思い出す。



『人として死ねる』と言い残し、死んだ人たち。痣だらけの体で、痛みを堪えながら逃げ出し、獣に襲われ、命を落とす。


辛いとか、苦しいとか。そんなモンじゃ無い。ガッと攫われて、強いられる。生きるため従い、悶え苦しむ。



「あぁ。」


シゲに話しながら、考える。



マル。あの小さな体に付けられた、多くの痣。足を引き摺り、苦しそうに歩く姿。真っ青な顔をして、ドロンとした目をして、牙の滝から身投げした。


オロチ様に助けられたとはいえ、痛かっただろう。苦しかっただろう。


見えない力に守られていたから、闇に飲まれなかった。おにの力でも、北山から守れなかったのか。



「マルも・・・・・・。」


考えたくは無いが、まさか。



「見たくないモノは見せられたが、直ぐに心を閉ざし、死を選んだ。」


「ではオロチ様、マルは!」


「清らかだ。」


シゲもノリも、ホッとした。


もし・・・・・・。だとすれば骨の五六本ごろっぽん、へし折っていただろう。






朝。顔を洗って、考える。山歩き、どうしよう。


「キュゥン?」 ドウシタノ?


フフッ、撫でられちゃった。スリスリ。



「マル。我の友を引き合わせよう。コホン。我のめぐし子、マルだ。こちらの黒狐が我の友、狐の泉のコッコ。」


「はじめまして、マル。」


はじめまして、コッコさん。マルです。この仔はマルコです。


「キャン。」 ハジメマシテ。


九尾の黒い狐さま。マルを守ってくださるのですね。よろしくお願いします。





「おはよう、マル。」


「おはよお、ノリさんっ。」


「ん? 狐かな、犬じゃないな。」



す、凄い。ノリの犬センサーに反応した! イヌ科だからね、狐って。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ