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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
306/1635

6-140 行ってきまぁす


朝の山歩きから戻り、朝餉。片付けが済んだら、お出掛け。


着替えの入った袋を背負い、水筒は斜め掛け。マルコの背負子しょいこには、干し肉の入った袋。



仔犬の背負子は、とても小さい。


荷を運ばせるためで無く、慣れさせるために背負わせる。良村よいむらの犬は皆、そうして育つ。


背負子を背負うのは、誇らしい事。良村の犬である、あかしだ。



「どうだい、マルコ。痛くないかい?」


マルコは、他の仔犬より小さい。ノリコが仔犬の時に使っていた背負子より、軽く作った。


「キャン。」 イイカンジデス。


カズさん、ありがとうございます。ボクにピッタリです。




「ワン。」 シッカリナ。


「ワ、ワン。」 ケッシテ、キヲヌクナヨ。


「クゥ、ワン。」 オシエタ、トオリニナ。


「キャ、キャン。」 ミナサン、アリガトウ。

  

シロさん、クロさん、シゲコさん。いろいろ教えてくださり、ありがとうございます。



「キュゥ。」 イイナァ。


ちょっぴり、ご機嫌ナナメです。カズさん、コハルの背負子は?






「さて、行こうか。」


「はいっ。」


カズとシゲに舟を押さえてもらい、舟に乗ったマル。マルコが続いて、トコッ。


「ありあとっ。」


ニコッ。


「みんなっ、いてきまぁす。」


見送りに来てくれた皆へ、ブンブンと手を振る。





舟寄せから、森川。鮎川に出て、底なしの湖へ。深川から大川へ入り、釜戸山へ。


いつもなら早川から鳥の谷に入り、釜戸山を目指す。源の泉で二手ふたてに分かれ、山に入る許しを得てから、守り人の村へ。



このたびすでに、山に入る許しを得ている。しかも大川から入って、釣り人の村で待つように言われている。





谷河の狩り人と釜戸山に入った時は、歩きだった。舟で大川を渡るのは、初めて。ワクワクが止まらない。


マルコはみよしに立ち、尾を振って御挨拶ごあいさつ



犬が舳には立つのは、珍しい事では無い。犬の首に布を巻くのは、良村だけ。遠くからでも、直ぐわかる。


行き交う舟人ふなびとは皆、ニッコニコ。



可愛かわいらしい水先犬みすさきいぬに、楽しそうな幼子おさなご。手を振ると、ニッコリ笑って、振り返してくれる。




マルは、舟に乗るのが大好き。


日の光を浴びて、キラキラ輝く川面かわおもて。空にはモクモク、白い雲。頬を優しく撫でる風に、ウットリ。



ともかいを操りながら、シゲは思い出す。初めてマルを舟に乗せた時の事を。


折れそうな程、細かったマル。他の仔犬より小さく、育たないと言われたマルコ。


大きくなったなぁ。






良村から釣り人の村まで、半日かかる。朝早く出たが、水夫かこはシゲ一人。休み休み漕ぎ、着いた頃には、日が暮れていた。


村では、そろそろ休む頃。なのにマルは、ちっとも眠くなかった。むしろ、ギンギン。


どうしたものかと思ったが、勧められるままで湯に浸かり、出てから白湯さゆを飲むとウトウト。そしてスヤスヤ、夢の中。


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